大きな桶の水が注がれると、沈之冽は反射的に後ろに下がり、ついでに葉悠悠を後ろに引っ張った。
その水が自分の横をかすめていくのを目の当たりにして、葉悠悠はやや動揺していた。
入口を見ると、沈おばあさまが水桶を持っており、葉悠悠に水がかからなかったことに少し失望した様子だった。
沈之冽は沈おばあさまを見て、少し怒って叫んだ。「おばあさま、私たちが帰ってきたのが見えなかったんですか?どうして外に水を撒くんですか!」
「子供は分からないのよ、厄を全部払わなければならないのよ。この厄が家に入ったら、取り除くのは簡単ではないわ」沈おばあさまは真剣そうに言ったが、目は常に葉悠悠を見つめていた。
沈之冽はバカではないので、すぐに沈おばあさまが誰のことを言っているのか分かった。少し気まずそうに葉悠悠の方を向いて言った。「あねさん、誤解しないでください、おばあさまは…」
おばあさまが言っているのはあなたのことよ!
でもそんなことを言ったら、あまりにも人を傷つけてしまう!
沈之冽はそれを言い出せなかったが、葉悠悠が微笑んで、おばあさまに同調するのを見た。「そうですね、やはり払った方がいいですね」
その表情、その様子は、まるでおばあさまが遠回しに自分のことを厄だと罵っていることを知らないかのようだった。
沈おばあさまはそれを見て、冷笑し、身を翻して中に入りながら、少し投げやりに言った。「厄というものは、下賤な女と同じよ。あなたが気にしようがしまいが、存在し続けるの。本当に厄介ね」
沈之冽はさらに居心地が悪くなり、葉悠悠を見て言った。「あねさん…」
葉悠悠の表情は変わらず、うなずいて笑いながら言った。「おばあさまの言うとおりだと思います。さあ、中に入りましょう」
沈之冽は葉悠悠のこの表情を見て、おばあさまが少し行き過ぎだと感じた。
しかし、葉悠悠自身が何も言わない以上、沈之冽も何も言えず、葉悠悠のスーツケースを持って中に入った。
葉悠悠は中に入ると、沈之冽が持っていたスーツケースを取り戻し、沈洛安の部屋に持っていった。
部屋に入ると、沈洛安はちょうど眠っていた。
物音を聞いたのか、目を開けた。
眠そうな目だったが、非常に鋭い眼差しで彼女を見つめた。
葉悠悠は彼の視線に一瞬たじろぎ、その場に立ち尽くした。