第43章 服がくっついてしまった

このとき、林澈はちょうど記者たちが集まっているのを見た。

「記者が来てる。まずい、急いで行かないと。さっきも記者に会って、しばらく囲まれてしまったんだ」彼女にはまだ記者への対応経験がなく、何を言えばいいのか全くわからなかった。間違ったことを言って、記者に言葉尻を捉えられ、仕事に影響が出るのではないかと心配だった。

顧靖澤は一瞥して言った。「中に隠れる場所がある。行こう」

そう言って、顧靖澤は部下に目配せし、様子を見に行かせた。

二人はボディーガードの密かな護衛のもと、さらに奥へと進んでいった。

林澈は記者たちがついてこないのを見て、ほっとして言った。「良かった、振り切れた。でなきゃどうすればいいかわからなかった」

顧靖澤は無言で彼女を見つめ、心の中で思った。このホテルが顧氏の傘下でなければ、彼の部下がいなければ、彼女は逃げられたと思っているのか。記者たちがついてこなかったのは、来なかったのではなく、止められたのだ。

すぐにホテルの一室に到着し、休憩することになった。

顧靖澤が言った。「少し食べ物を持ってこさせた。先に何か食べなさい」

「よかった。顧靖澤、あなたって本当にいい人」彼女は顔を上げ、顧靖澤を見つめた。潤んだ大きな瞳には、大げさな感動の色が浮かんでいた。

顧靖澤は彼女が演技していることを知りながらも、心の中に満足感が広がるのを感じた。

「私がいい人だと分かったなら、私にもう少し優しくしてくれ」彼はそう言いながら、皿を彼女の前に押し出した。

彼女は車椅子に座っていて不便そうだったが、気遣って目の前に食べ物が運ばれてくるのを見て、さらに嬉しそうに彼を見た。

この男も、時々はそれほど嫌な奴じゃないのかもしれない。

林澈が何口か食べていると、顧靖澤の電話が鳴った。彼は電話に出た。

電話の向こうで、ボディーガードが言った。「社長、先ほど林有才様がお会いしたいとおっしゃっていましたが、お断りしました」

顧靖澤は無表情のまま、さりげなく林澈の方を見て、「ああ」と言った。

電話を切ると、林澈がもぞもぞと動いているのが目に入った。自分の服を引っ張っているようだった。顧靖澤は尋ねた。「どうしたんだ?」