第190章 この件を利用して誤魔化す

しかし、彼の味が口に残っていても、少しも気持ち悪くはなかった。むしろ、わずかな湿り気が彼女の情熱に火をつけたかのようだった。彼女の体は熱く燃え上がり、彼を抱きしめたい衝動に駆られた。

彼が離れた横顔を見つめると、唇の端にはまだ湿り気が残っていた。彼女は彼の美しい顔立ちを愛おしそうに見つめ、滝のような髪が彼の手の中で揺れているのを見た。彼女は彼をしっかりと抱きしめたい衝動と、胸の中で彼を深く愛おしく思う気持ちが湧き上がった。

彼の唇の端に浮かぶ笑みを見ると、急いで顔をそむけ、彼の手を慌てて離して奥へと走っていった。

顧靖澤は笑いながら、彼女の恥ずかしそうな様子を見て、心の中にかすかな達成感が走るのを感じた。

林澈は布団に潜り込み、顧靖澤が先ほどしてきた、湿り気のある恥ずかしくなるようなキスのことを考えていた。

なんて下品なんだろう!

どうやって忘れられるというの。

考えれば考えるほど、避けられないことに全身が熱くなってきた。彼女は自分が相思病にかかってしまったのではないかと思った。こんなにも切実に、一人の男性を求めているのだから……

林澈は頭から布団をかぶり、恥ずかしくて自分の心を見ることさえできなかった。

彼らがアメリカで治療を受けている間、国内では林澈が撮影中にけがをしたというニュースが瞬く間に広まっていた。

翌日、林澈が目覚めると、彼女のウェイボーがパンクしそうなほど爆発していた。多くのファンが彼女がけがをしたのかどうか、一体どうなっているのかを尋ねてきていた。

撮影現場から伝わってきた情報では、事故に遭って即座に海外で治療を受けているとのことだった。

そのような緊急性から、人々は重症なのではないかと想像せざるを得なかった。

ネット上では、林澈が顔面を損傷したという噂まで流れていた。顔全体が車にぶつかって大量の出血があり、顔面損傷の恐れがあるというのだ。

このニュースは、すでに高い人気を誇っていたドラマをさらに押し上げ、一気に検索ランキングのトップに躍り出た。林澈に関するニュースも再びトップニュースとなった。