第265章 私たちは惚れたんじゃない、先に寝たんだ。

林澈は顧靖澤と一緒に立ち、顧靖溟を見つめながら淡々と言った。「お兄さん、お誕生日おめでとうございます。」

　　実際、大統領をお兄さんと呼ぶのは、林澈にとってはどうしても口に出せない感じがした。

　　最初のうちは、顧靖澤のそばにいるだけで、まるで夢の中にいるような、現実の生活とはかけ離れているような気がしていた。しかし、それが自分の現実の生活でもあった。

　　顧靖溟は淡く微笑んで、みんなに中に入るように言った。今回は来客が多く、顧家の人だけでなく、顧靖溟の政治家仲間や支持者たちも招かれており、もちろんみな富豪か貴族のような人々だった。

　　林澈がそこで見ていると、突然遠くに、ある人物が顧靖澤の方向を見ながら冷笑しているのが目に入った。林澈は一目見て見覚えがあると思い、突然思い出した。あの日、莫惠苓と一緒にいた李明嶼という男ではないか。

　　彼がなぜここにいるのだろう。

　　顧靖澤もちょうどその時彼を見つけ、目を細めてそちらをしばらく見つめてから、林澈の手を引いて言った。「行こう、中に入ろう。」

　　早春の天気はまだ肌寒く、外出時は服装に気をつける必要がある。林澈は顧靖澤について中に入ると、まず上着を脱いで、そばの使用人に渡した。

　　そのとき、後ろから李明嶼の軽薄な声が聞こえてきた。「顧社長、私を見かけたら逃げるというのはどういうことですか？」

　　顧靖澤は振り返って言った。「逃げているのではなく、あなたとは話すことがないだけです。」

　　李明嶼は横にいる美しい林澈を眺めながら、笑って言った。「なんだ、話すことがないというより、あなたの元カノが今私のそばにいることに気まずさを感じているんじゃないですか。」

　　顧靖澤はフンと笑い、冷たく李明嶼を見つめて言った。「もしあなたが言っているのが惠苓のことなら、彼女が今どうしているかは私には関係ありません。あなたたちが本当に一緒になりたいなら、そうすればいいでしょう。」

　　顧靖澤が突然そんなにさらりと言うのを聞いて、李明嶼は一瞬思わず、「はっ、そんなふりをしてね。あなたがそんなに早く元恋人のことを忘れられるとは信じられないけどね。」