夜、林澈は一人で顧家に戻ると、憂鬱な気分だった。
部屋を見つめながら、自分も大げさだったと感じた。顧家での日々、本当に自分が顧家の若奥様になれると思い込んでいたのだろうか。
実は、こんな日が来ることは分かっていた。林澈は何度も心の中で想像していた。いつか顧靖澤と別れ、二人は二度と関わることなく、彼女は平凡な世界で、顧靖澤が妻を娶り子供を持ち、人々の注目を浴びながら輝かしい人生を送るのを見守ることになるのだと。
彼女はため息をつきながらベッドに座り、自分にどれだけの財産が残っているのか確認し、これからどんな生活を送るべきか、どこに家を買うか、あるいはどこを借りるかを考えていた。
そのとき俞閔閔から電話がかかってきて、撮影班が次のロケ地に移動するという知らせを伝えてきた。林澈は今夜撮影班と一緒に行くか、それとも明日航空券を予約して行くかと尋ねられた。
林澈はここを見回し、自分は立ち直らなければならないと感じた。一生懸命働いて、これからも自分の人生を大切に生きていかなければならない。たとえ顧靖澤がいなくなっても、生きていかなければならないのだ。
幸い、これまで自分の生活を諦めずにいたからこそ、今も自分のやるべきことがあるのだ。
林澈は俞閔閔に、今日みんなと一緒に行くと直接伝えた。到着してからの宿泊やその他の手配も一緒の方が便利だろうと。
そこで林澈は簡単に荷物をまとめると、すぐに空港へ向かった。
空港では、みんながだらだらとスマートフォンを見ていた。林澈が来ると、宋書海は「あなたは本当に仕事熱心ね」と言った。
林澈は笑って「書海さんだって来てるじゃないですか」と答えた。
「私は夜のシーンがあったから、撮影が終わった後も眠くならなくて、そのまま空港に来ただけよ」
林澈は「家にいても面白くないので、みんなと一緒に行動した方がいいと思って」と言った。
一行は最終便を待っていた。外では、ファンたちがこちらの芸能人に気付き、近寄ろうとする者もいたが、空港の警備員が忙しく制止していた。人が増えすぎて良くない影響が出ないように、空港は特別にプライベートルームを用意し、みんなでVIP待合室で待機するように案内した。
みんな喜んで移動しようとしていた。
林澈にとっては初めてではなかった。顧靖澤が外出するときはいつもこのようなプライベートルームだった。