第360章 トイレで人にぶつかった

林澈は洗面所に入り、出てきたとき、みんながまだ話し合っているのが聞こえた。

「顧靖澤が来たなんて。」

「そうね、顧家が陸家と縁組みしたばかりだから、顧靖澤も妹の面目を立てて、陸家との付き合いを深めないとね。」

「あの陸お嬢様、ずっと前から彼を狙っていたのよ。見なかった？さっきからずっとくっついているじゃない。」

「ハハ、以前の陸お嬢様はなんて慎み深くて高慢だったことか。あんなに多くの求婚者がいたのに、一顧だにしなかったのに。」

「それは気に入らなかっただけよ。ほら、この人を待っていたのね。野心も大きいわ、顧靖澤を狙うなんて。」

「顧奥様になりたくない人なんているの？」

林澈は思わず中で手を握りしめた。

顧奥様か、なりたくない人なんているものか。そう、この陸初夏の野心は誰の目にも明らかなようだ。でも彼女は少しも気にしていないようだった。

では、顧靖澤はどうなのだろう。彼は気にしているのだろうか。

林澈は考え事をしながら出ていき、うっかり誰かにぶつかってしまった。

「あら、申し訳ありません。大丈夫ですか？見せてください。」林澈が見ると、その老人は地面に転んでしまったようで、座り込んでいた。少し青ざめた唇は、病気のような様子を見せていた。

林澈は驚いて、急いで言った。「あ、おじいさま、具合が悪いのですか？」

老人は顔を上げて林澈を見つめ、一目見ただけで目を見開いた。

「君は...君は...」彼は突然林澈の手首を掴んで尋ねた。

林澈はさらに驚き、急いで言った。「おじいさま、ご心配なく。私は逃げませんから。私があなたにぶつかったのですから。何か問題はありませんか？」

彼は林澈をじっと見つめ、目を細めて、まるで彼女の表情の一つ一つを注意深く観察しているかのようだった。

林澈は不思議に思いながら、老人を見て言った。「おじいさま、どうされましたか？本当にどこか怪我をされましたか？教えてください、見させていただきます。」

しかし老人は林澈の腕を掴んで言った。「いや、いや、どこも怪我はしていない。」

林澈はこの老人が少し様子がおかしいと感じ、心配そうに見つめながら言った。「一体どうされたのですか？おじいさま、きっと怪我をされているはずです。」