第482章 あなたは簡単に私の全てを奪った

女子トイレで、林澈がまだ手を洗っているとき、突然目の前が真っ暗になった。

その後、意識を失った。

目が覚めたとき、まだどこかで揺れているような感覚があり、体は力が入らず、車の中で動いているようだった。

彼女は目を細めて、目の前の状況を必死に確認しようとしたが、真っ暗闇だった。

そして、自分が車のトランクの中にいることに気づいた。

どれくらい時間が経ったのか分からないが、ようやく降ろされた。

暗い部屋で、彼女は解放され、床に投げ出された。頭を上げると、地下室のような場所にいることが分かった。

急いで周りを見回すと、傍らに楊凌昕がいて、眠りに落ちていた。

林澈は急いで楊凌昕を叩いて起こそうとした。「昕ちゃん、昕ちゃん、早く起きて、起きて。」

昕ちゃんはぼんやりと目を開けた。

目が覚めると、驚いて直ぐに林澈の側に縮こまった。

「澈さん、ここはどこ、ここはどこなの。」

林澈は楊凌昕を抱きしめながら、「私にも分からない……」

「さっきトイレにいたのに……急に後ろから誰かが……」

「そうね……」林澈の最後の記憶もそうだった。

楊凌昕は突然立ち止まり、「まさか、誘拐じゃない？私たちが誘拐されたの？澈さん、もしかして……ストーカーファンとか？」

林澈は首を振った。ストーカーファン？それはありえない。顧靖澤のボディーガードを突破して彼女を連れ出せるのは、ストーカーファンではなく、きっと相当な力と影響力を持つ人物に違いない……

そのとき、外から声が聞こえ、二人に答えを与えた。

「連れて来たのか？」聞き覚えのある女性の声に、林澈は驚いた。

「はい、お嬢様。ですが、中に女性が二人いて、どちらがご所望の方か分からなかったので、両方連れて参りました。」

「何？女が二人？」

その声とともに、ドアが開いた。

入ってきたのは、陸初夏以外の何者でもなかった。

彼女は見た目がかなり痩せ、疲れた様子だった。

林澈は不思議に思った。彼女と別れてからそれほど時間が経っていないのに、なぜこんなに短期間でこれほど痩せてしまったのだろう。

楊凌昕は陸初夏を見て、さらに林澈の背後に隠れた。

陸初夏は冷ややかに笑い、「林澈よ林澈、結局私の手に落ちたわね。」

林澈は驚いて陸初夏を見つめた。「私を誘拐したの？陸初夏、あなた何か病気なの！」