顧靖澤は言った。「彼とは少し親交があるので、数日間遊びに来るよう誘われたんだ」
「でも、ここは本当に広いね」
かつては貴族の場所だったのだ。彼女も貴族の邸宅を訪れた人になったわけだ。
*
ふふん、と彼女は心の中で思った。顧靖澤についていけば得をする。以前の自分なら、せいぜい外に立っているあの新郎新婦のような存在で、ここを憧れの目で見ているだけだったろう。でも今は、顧靖澤のおかげで、中にいる人間になれた。
中にいる人間にも中にいる人間の悩みはあるけれど...それでも彼女は、これが自分の幸運だと感じていた。
顧靖澤と一緒に、たくさんの純正ラベンダーオイルを作り出した。
林澈は顧靖澤の静かに作業する姿を横目で見ながら、彼が大企業の社長にならずに工場労働者になったとしても、きっと一番かっこいい労働者として、ネットにアップされたらすぐに大勢の人が群がるインフルエンサーになっただろうと思った。
最初は彼女がやると言ったのに、結局は顧靖澤がやることになった。林澈の不器用な様子を見ていられなかったからだ。
一日中かかって疲れ果てたところに、夕方になって陸北辰が再びやってきた。
彼は車で来て、部屋中のエッセンシャルオイルを見て驚いた様子で「ネットショップでオイルを売るつもりじゃないよね?」と言った。
林澈は恥ずかしそうに「そんなことないわ、暇つぶしで作っただけよ。売らないわ売らないわ」と答えた。
陸北辰は小さな瓶を手に取って見ながら笑って言った。「要らないなら全部俺にくれよ。これが顧靖澤が直接搾ったものだと言えば...すぐに高値で売り切れるんじゃないか?」
林澈は呆れて思った。この商人たちときたら、何かあるとまず商売のことを考えるんだから。
「そんなわけないでしょ。あなたが売っても、誰も顧靖澤が作ったなんて信じないわよ」と林澈は言った。
陸北辰は「その通りだ。高貴な顧靖澤が重労働をするなんて、誰も信じないだろうな」と言った。
そのとき顧靖澤が中から出てきて、陸北辰を見て「また何しに来たんだ?」と尋ねた。
陸北辰は「オペラを見に行かないかと誘いに来たんだ。この近くで最近、名作『オペラ座の怪人』の公演があるんだ。フランスまで来たんだから、見に行かないか?」と言った。
林澈はそれを聞いて、すぐに「あぁ、あの有名な名作オペラね」と言った。