第529章 君を喜ばせるなら、この金は惜しくない

林澈はごくごくとジュースを飲み干し、やっと気分が良くなった。

彼女は顔を上げて、店主を見つめ、「ザリガニ、辛すぎるわ」と言った。

店主は身を縮めて、心の中で苦しんでいたが、何も言わなかった。

お嬢様が自分で一番麻辣を注文したのに、今になって辛すぎると文句を言うなんて。

本当は調味料を控えめにしようと思っていたのに、大勢のお客様がいらっしゃるのを見て、辛さが足りないと心配になり、わざと多めに入れたのに……

店主は「では新しいものをお作りしましょうか」と言った。

「いいえ、結構です」と林澈は言った。「お酢を持ってきてください」

店主は急いで取りに行った。

意外とこのお嬢様は話が分かる人だった。

林澈は深く息を吸って、「あなたは食べないの?」と聞いた。

「食べない」

林澈は「たまに食べるとすごく美味しいのに、食べないなんてもったいないわ」と言った。

「大丈夫、君が食べ終わったら食べるよ」と顧靖澤は言った。

「私が全部食べちゃったら、何を食べるのよ!」

顧靖澤は暗示的に彼女の唇を見つめ、「ちょっと味見するだけでいい、味が残っていれば十分さ」と言った。

顧靖澤の視線に気づいた林澈は口を尖らせて、「うるさい、やだ!」と言った。

顧靖澤は「どうしたの?私は器の中の具材を味見すると言っただけだよ」と言った。

「……」

顧靖澤は瞳を輝かせながら、「なに?君は私が何を言っているのかと思ったの?」

「……」

顧靖澤は「そうだね、今日は邪魔が入って、ホテルで君とするべきことができなかった……でも、まだ時間があるから、私は……」と言った。

彼はテーブル越しに身を乗り出し、軽く彼女の唇に触れた。

軽いキスから、徐々に深いものへと変わっていった。

彼女は彼の豊かな唇を舐め、彼の温もりと熱さを感じながら、心が幸せで満ちているような気がして、思わず積極的になり、彼と一緒にテーブル越しに舌を絡め合わせ、ゆっくりと彼の味を味わった。

顧靖澤は人の心を癒す良薬のようで、こうして彼と戯れているうちに、徐々に心の棘も抜かれていくようだった。

林澈は思った。たぶん自分が間違っていたのだろう。顧靖澤のことをこれほど慕う人がいることを考えもしなかった。