彼女はオフィスで王子さまが他人の仕事の邪魔になるのではないかと心配していた。
ここは家ではないし、使用人たちが面倒を見てくれるわけでもない。
秦浩は慌てて言った。「いいえ、みんな王子さまのことが大好きで、本当に可愛がっているんです。」
これが顧社長の愛犬だと聞いただけで、見に来る人が大勢いるんだ。
この子犬は、自分よりも人気者になってしまったな。
秦浩は少し憂鬱に考えた。顧社長の犬でさえこんなに人気があるなんて、うう、人と比べると腹が立つ……
自分も女の子たちに囲まれたいのに!
顧靖澤は林澈と外で食事を済ませてから、二人で帰った。
——
翌日、俞閔閔は林澈に電話をかけ、『微力』が表紙撮影に来てほしいと言っていると伝えた。
林澈は「いいね、前に撮影したことがないって言ってたでしょう。試しに撮ってみるのもいいかも」と言った。
俞閔閔は「そうね、すぐに表紙撮影があるんだけど、前回あなたがあの服を着ていた時、腹筋が少し見えたって言われたわ。この数日で腹筋が元に戻らないように、もう一度しっかり鍛えてね」と言った。
「ああ……最近は確かに運動不足だったかも」
「うん、帰ったらしっかり運動してね。どうしても無理なら、顧靖澤に協力してもらって運動するとか、ねえ」
「うるさい……俞閔閔、本当に、結婚してからますます下ネタが増えたわね。総統様との性生活、かなり良いんでしょう?」
「うるさい!」
俞閔閔はバンと電話を切った。
思わず顔を上げて、向かいの顧靖溟を見た。
彼女が自分の事務所を開いたことを知って、顧靖溟は琉璃宮に小さな作業室を用意してくれた。でも、あまり場所を無駄にせず、彼が普段本を読む場所の向かいに小部屋を設けた。引き戸式なので、ドアはあまり閉めない。どちらにしても仕事中はお互いの邪魔にならないのだから。
彼は今、向かい側にいて、開いているドア越しに、C国の国旗が掲げられた机に座る彼の凛々しい姿が見える。一国の首長としての姿は、本当に心の中で崇拝の念を抱かせるものがある。
やはり彼は一国の大統領なのだから。
顧靖溟は真剣になると、全く顔を上げないのだ。
俞閔閔はこちら側で見ているだけで、自分の顎を支えている。
思わず先ほどの林澈の言葉を思い出し、そうだ、性生活は調和がとれている……と考えた。