第649章 大統領夫妻が愛の甘さを振りまく

大統領閣下が夫人のために腰をかがめ、耳元でささやいている様子は、あまりにも親密すぎるのではないか。

それもメディアの前で、大統領閣下はあまりにも素晴らしく、温かい。

大統領夫人は...本当に幸運だな。

しかし、彼らには聞こえないことだが、顧靖溟が俞閔閔の耳元で言ったのは「もう少し話さないと、ここから放り出すぞ」ということだった。

俞閔閔は心の中で悪態をつきながらも、メディアの方向に向かって微笑みながら手を振るしかなかった。

メディアのフラッシュはさらに狂ったように光り、すべてのカメラが俞閔閔の方向に向けられた。

その日のメディア報道では、カメラに向かって手を振る俞閔閔と、彼女に耳打ちする顧靖溟の写真が、各メディアの表紙を飾った。

「大統領夫妻が甘い雰囲気で外遊、ファンたちがうっとり」

「史上最高の美貌を持つ政権、大統領夫人は前世で何を救ったのか、今日の甘い生活を手に入れるために」

「大統領閣下の人気急上昇、親密な写真が私蔵される」

このような見出しがネット上に溢れていた。

俞閔閔も称賛され、以前の結婚式の時よりも気品が増し、より国母らしく見えるようになったと言われていた。

尹素雅はテレビでこれらの情報を見ることができた。

彼女は目を細めた。今日の外遊で、顧靖溟は俞閔閔を連れて行ったのだ。

尹素雅は知っていた。ネット上では数日前から、大統領は結婚後も夫人を連れて行かず、まるで独身のようだと言われ、二人の結婚後の関係に疑問が持たれていた。顧靖溟の側近たちがそれを見て、急に俞閔閔を同行させるよう広報対策を取ったのだろう。

そうでなければ、顧靖溟がこんな教養のない女を連れて行くはずがない。

尹素雅はそれらの写真を見続け、心の痛みを隠しきれなかった。

ましてや、あの称賛の声を聞いて、彼女の心がどう感じるかは言うまでもない。

そうだ、誰でも琉璃宮の特注の高級服を着れば、気品が出るものだ。あれはデザイナーが特別にデザインした、ブランドロゴもない特別なサービスだということを忘れているのか。

あの高い地位に立てば誰でも国母のように見えるものだ。それも顧靖溟の気品に引き立てられているだけではないか。

実際、俞閔閔だけを見れば、おどおどしているだけで何が国母だというのか。

尹素雅は携帯電話を手に取った。