第76章 彼はまだ人間なのか！

「それで、小娘が怪我をしたというのは、この擦り傷のことか？」

　　墨夜司は無表情で、冷たく言った。「何か問題でも？」

　　陸饒：「……」

　　つまり、墨夜司のやつは、彼が10時間連続で手術をしたことを無視して、自分の妻を診るために彼を呼び出したのは、本当に擦り傷だったのか？

　　彼にはまだ人間性があるのか？！

　　彼はまだ人間なのか！

　　異性はあっても人間性のないこいつ！

　　こんなに人として酷いことをしていたら、将来友達がいなくなるぞ！

　　陸饒は気が狂いそうに言った。「10時間連続で手術をすることがどれほど疲れるか分かるか？」

　　墨夜司は彼を一瞥し、淡々と言った。「15時間連続の手術もやったことがある。問題ないと思うが。」

　　陸饒：「……」

　　それはあんただろ？

　　あんたが鉄人だからって、他の人もあんたと同じだと思うなよ！

　　墨夜司は少しも罪悪感を感じていない様子で、この理不尽な態度を見て、陸饒はますます腹が立ち、もう絶交してやろうかと思った。

　　彼は怒りながらぶつぶつ言った。「ねえ墨社長、墨おぼっちゃま、あんたも何年も医者をしてきたんだろ？奥さんの怪我が重いかどうか、見ただけで分からないのか？こんな擦り傷程度で病院に来る必要なんてないだろ？」

　　「墨夜司、私たち帰りましょう。」喬綿綿は恥ずかしそうにソファから飛び降りた。

　　彼女は陸饒の前に歩み寄り、赤面しながら言った。「院長先生、申し訳ありません、お邪魔してしまって。彼のことは気にしないでください。私は大丈夫です、検査は必要ありません。早く休んでください。」

　　彼女には、墨夜司がどうしてそんなことを言い出せたのか分からなかった。

　　彼女はただ少し皮膚が擦れただけなのに、病院長自ら診察させるなんて。

　　これは人材の無駄遣いじゃないか。

　　しかも、陸饒がつい先ほど手術室から出てきたばかりだと知ったら、彼女はますます申し訳なく感じた。

　　彼女でさえ、墨夜司が本当に酷いと思った！

　　こんな友達がいたら、絶対に絶交するに違いない！

　　喬綿綿は言い終わると、ドアの方へ歩き出した。

　　ほんの二歩歩いただけで、墨夜司に引き止められた。