第84章 あなたに会いたくて、来ました

しかし、すぐに彼の硬直した体はゆっくりと緩み始め、抱擁も次第に温かくなってきた。

　　墨夜司は掠れた声で言った。「綿綿、俺のこと恋しかった？」

　　「墨夜司」女子寮の前だということを思い出し、多くの人が見ていることを意識して、喬綿綿は顔を赤らめながら言った。「離してくれない？みんなが私たちを見てるわ」

　　そう言って、彼女は軽く身をよじった。

　　彼の接近を拒んでいるわけではなかった。

　　しかし、多くの視線が彼と彼女に注がれていることに、喬綿綿は居心地の悪さを感じていた。

　　「ベイビー、動かないで」墨夜司は腕に力を込め、あごを彼女の頭に乗せ、低く掠れた声で疲れた様子を見せながら言った。「俺、疲れてるんだ。ちょっとだけ抱かせてくれ。たった1分でいいから」

　　彼の声に疲労を感じ取り、本当に疲れているようだと感じた喬綿綿は、少し躊躇した後、素直に彼の胸に身を寄せ、抱きしめられるままにした。