第391章 悪夢

喬綿綿の体から漂う香りは彼をすぐにリラックスさせることができ、鎮静効果があるかのようだった。これまで彼が服用したどんな薬よりも効果的だった。

　　甘い果実の香りと淡い花の香りが彼の鼻先に漂っていた。この瞬間、彼は完全にリラックスした状態にあり、目を閉じてしばらくすると、眠りに落ちた。

　　*

　　この夜、喬綿綿が側にいる状況で、墨夜司は再びあの悪夢を見た。

　　夢の中で、彼は誘拐された日に戻っていた。

　　湿気のある古びた地下室で、彼は手足を縛られ、口には布切れが詰め込まれていた。整った可愛らしい顔は汚れで覆われ、本来の姿がわからないほどだった。

　　彼は凶悪な見た目の武装した犯罪者たちに見張られ、毎日一個のまんじゅうだけで命をつないでいた。その犯罪者たちは金持ち嫌いで、彼を誘拐した後、毎日一個のまんじゅうしか与えないだけでなく、彼を殴打もした。

　　身代金のために彼が必要でなければ、おそらく彼らは彼を殴り殺していただろう。

　　夢の中で、墨夜司は傍観者のように、幼い頃の自分が泣きも騒ぎもせず、非常に冷静に救出を待っている様子を見ていた。

　　そして墨家が彼を身請けに来た日がやってきた。

　　墨家は警察を呼んでいた。

　　犯罪者たちがそのことに気づいたとき、激怒した彼らは人質を殺そうとした。

　　彼らは彼を車に乗せ、必死に道路を疾走した。

　　警察に追われる中、一群の人々は慌てふためき、車を崖下に向かって走らせた。

　　そのとき、彼は運が良かった。

　　彼を誘拐した犯罪者たちは全員崖下に落ちたが、彼が車から投げ出されたとき、追いかけてきた警官が間一髪で彼をつかみ、引き上げた。

　　みんなが彼が救出され、安全になったと思ったその瞬間、別の一団の犯罪者たちが駆けつけた。仲間の車が崖下に落ちたのを見て、怒りに我を忘れ、理性を失った状態で彼らに向かって発砲した。

　　崖下から彼を救い上げた警官は、真っ先に彼の前に立ちはだかった。

　　彼のために飛んでくる弾丸を受け止めた。

　　このとき、夢は真っ赤に染まった。

　　彼のために弾丸を受け止めた警官の体から大量の血が流れ出し、すぐに警官の制服全体が赤く染まった。

　　彼は目を見開き、若く端正な顔には未練と名残惜しさが残っていたが、血だまりの中で動かなくなった。