彼は店員が持っている鞄をちらりと見て、確かに悪くないと思い、うなずいて言った。「うん、3色とも一緒に包んでください。」
店員の目は一瞬で輝き、口角の笑みが止まらなかった。「かしこまりました。少々お待ちください、すぐに包装いたします。」
一気に3つの鞄を売り切り、店員は喜色満面で去っていった。
喬綿綿は数秒間呆然とし、目を見開いて彼を見た。「3つの鞄を買ったの?」
「うん。」
「でも、私は1つだけ買うつもりだったのに。」
墨夜司は唇を曲げ、魅惑的な目で彼女を見つめ、低い声で言った。「気に入ったなら、いくつか買えばいい。お金の問題は考えなくていい。私が払うって言ったじゃないか?」
彼が特別に彼女とショッピングモールに来たのは、他人のために買い物をさせるためではなかった。
それに、魏徵が言っていたように、女性は皆鞄が好きだ。
当然、彼女にいくつか買ってあげなければならない。
喬綿綿:「でも、これは洛洛へのプレゼントで、どうして…」
後の言葉がまだ言い終わらないうちに、遮られた。「私たちは夫婦なんだ。結婚後の夫婦の財産は共同財産として計算される。私のお金は君のお金だ。私のを使うのと君のを使うのに違いはない。」
「……」
この言葉は…なんだか理にかなっているようだ。
「でも、同じデザインで3色も買う必要はないでしょう。」
これはあまりにも贅沢すぎるのでは。
「他の2色は気に入らなかったの?」
「気に入ったけど、でも…」
「気に入ったなら、全部買えばいい。お金がないわけじゃないんだから。」
喬綿綿:「……」
やっぱり、貧乏人だけが選択を迫られるのだ。
お金持ちは、選択する必要がない。
つまり、彼女の選択困難症は、結局のところお金がないからなのか。
お金があれば、選択に困ることはないのだろうか。
*
鞄を買い終わると、喬綿綿はもうショッピングモールを出たいと思った。
こんなにちょっと買い物しただけで、数十万円も使ってしまった。
墨夜司がカードで支払っているとはいえ、彼女の心は痛むのだ。
しかし墨夜司は、まだ買い物を続けたいようだった。彼は進んで鞄を持つ役目を引き受け、堂々たる墨氏社長が左手に1つ、右手に1つの鞄を、喜んで持っていた。
「もう帰るの?」