第385章 貧乏な人だけが選択を迫られる

彼は店員が持っている鞄をちらりと見て、確かに悪くないと思い、うなずいて言った。「うん、3色とも一緒に包んでください。」

店員の目は一瞬で輝き、口角の笑みが止まらなかった。「かしこまりました。少々お待ちください、すぐに包装いたします。」

一気に3つの鞄を売り切り、店員は喜色満面で去っていった。

喬綿綿は数秒間呆然とし、目を見開いて彼を見た。「3つの鞄を買ったの?」

「うん。」

「でも、私は1つだけ買うつもりだったのに。」

墨夜司は唇を曲げ、魅惑的な目で彼女を見つめ、低い声で言った。「気に入ったなら、いくつか買えばいい。お金の問題は考えなくていい。私が払うって言ったじゃないか?」

彼が特別に彼女とショッピングモールに来たのは、他人のために買い物をさせるためではなかった。

それに、魏徵が言っていたように、女性は皆鞄が好きだ。

当然、彼女にいくつか買ってあげなければならない。

喬綿綿:「でも、これは洛洛へのプレゼントで、どうして…」

後の言葉がまだ言い終わらないうちに、遮られた。「私たちは夫婦なんだ。結婚後の夫婦の財産は共同財産として計算される。私のお金は君のお金だ。私のを使うのと君のを使うのに違いはない。」

「……」

この言葉は…なんだか理にかなっているようだ。

「でも、同じデザインで3色も買う必要はないでしょう。」

これはあまりにも贅沢すぎるのでは。

「他の2色は気に入らなかったの?」

「気に入ったけど、でも…」

「気に入ったなら、全部買えばいい。お金がないわけじゃないんだから。」

喬綿綿:「……」

やっぱり、貧乏人だけが選択を迫られるのだ。

お金持ちは、選択する必要がない。

つまり、彼女の選択困難症は、結局のところお金がないからなのか。

お金があれば、選択に困ることはないのだろうか。

*

鞄を買い終わると、喬綿綿はもうショッピングモールを出たいと思った。

こんなにちょっと買い物しただけで、数十万円も使ってしまった。

墨夜司がカードで支払っているとはいえ、彼女の心は痛むのだ。

しかし墨夜司は、まだ買い物を続けたいようだった。彼は進んで鞄を持つ役目を引き受け、堂々たる墨氏社長が左手に1つ、右手に1つの鞄を、喜んで持っていた。

「もう帰るの?」