彼の義兄は今、義姉をとても可愛がっているし、義姉は良い人と結婚したけれど、やはり二人は普通に恋愛して結婚したわけではない。
義兄が今、埋め合わせをしたいと思っているなら、そうさせればいい。
*
墨夜司はまず喬宸を学校まで送った。喬宸が車から降りると、すぐにまた一台の高級車がやってきた。
彼から遠くない所に停まった黒いベントレーを見て、喬宸は校門に向かう足を止めた。体の横に垂らしていた片手がゆっくりと握りしめられた。
彼は後ろの人が自分を見ているのを感じた。
しかし、振り返らなかった。
むしろ足を速め、すぐに学校の中に入っていった。
彼の後ろ数メートルの所で。
車から降りたばかりの沈馨は顔色が青ざめ、唇を噛みしめ、目の縁が赤くなっていた。