喬綿綿の心臓の鼓動が、瞬く間に乱れた。
墨夜司という男は……また彼女を誘惑していた。
しかも毎回彼女は誘惑に耐えられず、彼が何気なく誘惑するだけで、彼女の心臓は言うことを聞かなくなってしまう。
時にはゆっくりと、時には速く、時には鼓動が止まったかのように。
自分のだんなにこんなに誘惑されてしまうなんて、本当に情けない。
でも、墨夜司は普通の男性なのだろうか。
こんなにイケメンで、しかも誘惑上手なだんながいたら、誰だって耐えられないはず。
「えーと、もう冗談はやめましょう。撮影所は雲城からそんなに遠くないし、約束するわ。時間があれば必ず会いに帰ってくるから、いい?」実は喬綿綿も長い間離れるのが辛かった。
二人は今まさに恋愛感情が高まっている時期で、このタイミングでこんなに長く離れ離れになるなんて、誰だって耐えられない。