第646章 心が全く落ち着かない

彼女は気取っているわけではない。

リソースを活用できるのは、もちろん良いことだ。

多くの心配を省き、回り道を避けることができる。

でも、彼女はやはり、今回の役を自分の力で勝ち取りたかった。

そうすれば、もっと自信が持てるはずだった。

「さっき言ったことを覚えているか?」

墨夜司は心が落ち着かなかった。

これは彼が喬綿綿と離れるのは初めてではない。

彼女は以前、学校に住んでいて、週末だけ家に帰ってきていた。普段も二人は離れて暮らしていた。

でもあの時は、こんなに心配していなかった。

その時は離れていても、二人は同じ街にいた。

距離も近かった。

会いたければ、毎日会える。

彼女に何かあれば、すぐに駆けつけて助けることができた。

もし彼女が別の街に行っても、そんなに遠くないし、飛行機で3時間で着ける。

でも、会いたくても、そう簡単には会えない。

彼女に何かあっても、すぐには駆けつけられない。

毎日会えないこと、すぐに彼女の側に行けないという不安感が、彼女のことを心配でたまらなくさせた。

彼女が一人で外地に行って、あちらの気候や環境に慣れるだろうか。

撮影現場では誰も知り合いがいないし、名も無き新人なのに、あんなに目立つ容姿をしているから、嫉妬されるかもしれない。

そうなったら、いじめられたりしないだろうか?

考えれば考えるほど不安になり、今すぐにでも荷物をまとめて一緒に行きたくなった。

しかし、理性はまだ残っていた。

もし墨氏を引き継いだばかりで、多くの事を自分で処理しなければならず、身動きが取れない状況でなければ、本当に彼女と一緒に行っていたかもしれない。

彼女は本当に...心配の種だ。

この瞬間から、彼女がこのドラマの撮影を終えるまで、ずっと心配し続けることになる。

喬綿綿は携帯を見ながら、少し上の空で答えた:「...うん、わかった。」

墨夜司はこれに非常に不満だった。

直接彼女の携帯を取り上げた。

喬綿綿:「...何するの?携帯返して。」

ちょうどナナに電話をかけようとしていたところだった。