相手は彼女の前で威張るどころか、こんなにも優しくしてくれている。断ったら、恩知らずに見えるのではないだろうか?
少し考えた後、やはり手を伸ばして受け取った。
「塗さん、ありがとうございます」彼女は小さな扇風機を持ちながら、甘く微笑んだ。
塗一磊は体の横に垂らした手を強く握りしめ、彼女の唇の端にある甘い笑顔に目を留め、思わず数秒間止まってしまい、突然心臓が速く鼓動するのを感じた。
これは...今まで一度も感じたことのない感覚だった。
こんな女の子がいるのか、笑顔がこんなにも美しい。
彼女が笑うと、まるで世界全体が美しくなったかのようだった。
彼の心臓は、太陽の光に愛撫されたかのように、胸の中のある場所が、その瞬間特別に温かくなった。
彼は生まれて初めて、女の子というのはなんて可愛い生き物なのだろうと感じた。
どうしてこんなに可愛いのだろう。
お団子ヘアの喬綿綿は、本当に可愛すぎた。
「腳本を読んでいるの?」塗一磊は彼女の手にある腳本をちらりと見て、去る気配は全くなかった。
喬綿綿は頷いて、小さな扇風機をつけて額に当て、やっと少し楽になった感じがした。
「どう?演じる役はうまくできそう?」
塗一磊は大木の幹にゆったりと寄りかかり、口では真面目に仕事の話をしているものの、目は喬綿綿の頭上に留まったまま、彼女のお団子ヘアを見つめていた。
そよ風が吹いてきた。
かすかな香りが彼の鼻に漂ってきた。
彼は深く息を吸い込み、それが甘い花の香りだと分かった。
とても良い香りだった。
木陰に座る少女は甘い顔立ちで、甘い笑顔で、そして彼女の体から漂う香りまでも甘かった。
甘くて...一口かじりたくなるほど。
塗一磊も、自分がここにずっといるのは良くないことは分かっていた。
人々の注目を集めることになるだろう。
先ほどの白玉笙の行動のせいで、喬綿綿は既に撮影現場で最も注目を集める人物となっていた。
彼がここにずっといれば、彼女はさらに人目を引くことになるだろう。
彼女を非難する人も、ますます増えていくだろう。
彼女にとっても、彼自身にとっても、良いことではない。
しかし、彼はどうしても離れたくなかった。
貪欲に、彼女ともう少し一緒にいたい、もう少し彼女を見ていたいと思った。
彼は生まれて初めて、一人の女の子を好きになった。