恋愛関係において、たいてい女性が男性にべったりとくっつくものだ。
しかし、墨社長の場合は、彼が若奥様にべったりとなっていた。
墨社長のような高冷な男性が、恋をするとこんな風になるとは思いもよらなかった。
魏徵はすぐにスマートフォンで検索を始め、2分後に顔を上げて言った:「社長、一番早い便は午後1時半です。つまり1時間後の便ですね。その他には午後4時過ぎと夜8時過ぎの便があります。」
彼は話しながら、夜8時過ぎの便を探し出し、予約しようとした。
指が画面に触れようとした瞬間、墨夜司が言った:「1時半の便を予約して。」
「えっ?」
魏徵は驚いて顔を上げた:「社長、1時半の便ですか?でも、この後重要な会議がありますし、午後にはアポイントメントも…」
言い終わらないうちに、墨夜司がデスクの上のノートパソコンを閉じ、書類の束を取ってパソコンの上に置き、立ち上がって彼に言った:「すぐに航空券を予約して、パソコンと書類を持ってF市に一緒に行くぞ。」
「副社長に連絡して、これからの全ての業務を彼に任せると伝えろ。」
墨夜司は言い終わると、オフィスの外へ向かって歩き出した。
彼はこんなに早くF市に行くつもりはなかった。
週末に行こうと思っていた。
しかし、あの写真を見て…
その写真を思い出すと、彼の表情が再び暗くなった。
撮影現場に来てまだ2日目なのに。
彼女の周りにもう彼女に対して良からぬ考えを持つ男が現れた。
やはり彼女一人を外に出すわけにはいかない。
本当に心配でたまらない。
彼は知っていた、自分のベイビーには多くの男性が惹かれるということを。
彼女はあまりにも素晴らしく、彼の心を完全に奪ってしまうほどだ。まして他の男性なら尚更だろう。
一度彼女が外に出て、より多くの人々が彼女の良さを知れば、彼女を好きになる人はますます増えていくだろう。
この考えが浮かんだ瞬間、墨夜司は深刻な危機感を覚えた。
彼は喬綿綿を隠してしまいたかった。彼だけが見ることができる場所に。
もう誰にも、彼女を見つけさせたくなかった。
そうすれば、彼女を狙う人もいなくなるだろう。
彼も今のように心配する必要がなくなるだろう。
*
白玉笙はメッセージを送った後、墨夜司からの返信を待たなかった。
彼はもうメッセージを送ることもしなかった。