彼女は彼の向こうを見て、誰かを探すふりをし、前方にいるナナを見つけると、まるで救世主を見つけたかのように、すぐに足早にナナの方へ歩き出した。
急ぎすぎたせいか、足元の小石に気付かず、踏んでしまい、足が滑って……
彼女が地面に転びそうになったとき、塗一磊は急いで前に出て彼女を支えた。
慣性の力で、喬綿綿は再び彼の胸に突っ込んでしまった。
塗一磊も習慣的に彼女の腰に手を添えた。
普通なら、喬綿綿が体勢を立て直した後、手を離すはずだった。
しかし、手を離そうとした瞬間、彼は何故か離したくない気持ちになった。
少女の柔らかく香る体が彼の胸に寄り添い、甘い香りが彼の鼻をくすぐった。
抱きしめる時も力を入れすぎないように気を付けた。少し力を入れすぎれば、彼女の腰が折れてしまいそうだったから。