第77章 豹王の登場

巨獣は匂いだけを認識し、木の上のヒョウには執着しなかった。

　　ムーアは出来る限り高く飛び、白箐箐が不快感を訴えるまで高度を上げてから方向を変えた。

　　パーカーは上空を見上げ、黒い点がどんどん小さくなり、最後には完全に見えなくなったのを見て呆然とした。

　　一緒に行くべきだったと思った。

　　パーカーには彼らが見えなくなったが、ムーアの鋭い鷹の目は下の様子をはっきりと捉えていた。彼は一方向に少し飛んでみて、獣の群れが引き寄せられないことを確認し、この方法が成功したことを知った。

　　白箐箐は高空で非常に苦しく、おそらく高山病だった。胸が苦しく息が切れ、さらに耳が痛く、耳道が水で詰まったようだった。

　　「苦しい……」白箐箐はムーアの背中に伏せて弱々しく言った。胸を噛まれた傷の痛みも明らかになってきた。

　　彼女が手で胸を押さえると、突然手のひらに温かい湿り気を感じた。

　　傷口が開いてしまったのだ！

　　「だめ……もう耐えられない。」白箐箐は呼吸が荒く、大きく息を吸っても酸素不足の体を満たすことができなかった。

　　ムーアの嗅覚はヒョウ族ほど鋭くなかったが、近くの血の匂いは捕らえることができた。すぐに血の匂いを嗅ぎ取り、白箐箐を振り返って見て、急いで体を傾けて下に飛んでいった。

　　耳鳴りと胸の苦しさは徐々に弱まったが、胸の痛みは引かなかった。

　　ムーアは大きな木の頂上に降り立ち、白箐箐を降ろすと、人間の姿に変わって焦りながら尋ねた。「どうして血を流しているんだ？」

　　「カーティスに噛まれたの。」白箐箐は苦笑いした。ムーアはカーティスが彼女を強制せず、追い詰められて初めて彼女と絆の力を結んだことを想像もしていなかっただろう。

　　ムーアは木の枝を掴んでいた手に力を入れ、それを折ってしまった。「畜生！」

　　白箐箐は息を整えて言った。「パーカーには言わないで。」

　　ムーアは黙った。

　　獣の群れがいた木々が揺れ始め、群れが再び動き出したようだった。

　　ムーアは言った。「奴らがお前の匂いを嗅ぎつけた。早く離れないと。」

　　白箐箐は頷き、決意に満ちた表情で言った。「もう一度上に飛んでください。耐えられなくなったら言います。」