黒狼の巣は気を失いそうなメスを担いで猿王城から飛び出した。近くにいた事情を知らない獣人たちは慌てて道を譲り、すぐに気迫の凄まじい一群の虎獸が追いかけて出てきた。
一頭の花豹さまが最後尾からシュッと駆け出し、虎の群れを追い越して、前方の黒狼の巣に迫った。
「どうしたんだ?あの狼獸がメスを奪ったのか?」
獣人たちはもちろんメスを守りたかったが、どちらがメスを傷つけているのかわからなかった。とりあえず獣人たちを止めて、メスをここに留めておく必要があると考えた。
そこで、その場にいた雄獸たちは暗黙の了解で追いかけている3つの獣人グループを取り囲み、修の前方を獣人で塞いだ。
「ガオー!」修の咆哮は狂気じみており、狼獸でさえその声に込められたメッセージを捉えるのが難しかった。ただこの獸が危険だということだけを感じ取り、さらに固く彼の前に立ちはだかった。
目の前の獣人に突っ込みそうになった時、修は後方から聞こえてくる走る音を聞いた。速度を落とすどころか、さらに速く獣の壁に向かって突進した。
「ピーッ」
空に鷹の鳴き声が鋭く響き、真昼の太陽の下、たくましい黒い影が地面を素早く掠めた。
メスを担いだ黒狼の巣が飛び上がり、獣の群れに衝突しそうになった瞬間、言うが早いか、その体は跳躍の軌道に沿って下降せず、逆に空へと滑り上がった。
鷹獸の力強い爪が狼獸の前足を一本掴み、もう一方の爪が白箐箐の腕を掴んで、二人を一緒に空へ持ち上げた。
「ウォーッ!」パーカーが修に飛びかかろうとしたその時、修が鷹獸に掴まれて飛んでいってしまい、狼の尻尾の毛を口いっぱいに噛みちぎっただけで、慌てて獣の群れを突き破って追いかけ続けた。
後方の虎獸たちの足取りが躊躇いがちになり、お互いに顔を見合わせた。
突然、獣の群れが不気味な静けさに包まれ、騒がしく沸き立っていた群衆が骨を蝕むような厳しい寒さで凍りついたかのようだった。
獣たちは一斉に振り向き、色とりどりの、形も様々な瞳に同じように危険な蛇の影が映った。虎獸たちは四紋蛇獸を見て、退く気配を見せた。
「カーティス!」パーカーはすぐに人間の姿に戻り、空を指さして慌てて叫んだ。「箐箐が連れ去られた!」
カーティスは冷ややかに獣の群れを一瞥し、頭を上げて空を見上げた。