すると唐雲帆は見つかったと聞いて、詳しく尋ねる余裕もなく、とにかく顾蔓に会いたい一心だった。
そして、唐雲帆はその場で車を置いて冷少霆の車に乗り込み、全明楷に電話して車を移動させるよう頼んだ。
唐雲帆からの電話を受けた全明楷は驚きのあまり、しばらく呆然としていたが、反応したときには既に電話は切れていた。幸い、驚きながらも彼の言葉はしっかりと聞き取れていた。
電話を掛け直すことはせず、全明楷は急いで唐雲帆の車を移動しに向かった。
しばらくして、唐雲帆はようやくそこに第三者がいることに気付いた。
「寧寧、この方は?」と唐雲帆は尋ねた。
「私の友達で、冷少霆という人よ」と顾寧は言ったが、彼氏だとは紹介しなかった。
「唐さん、はじめまして」と冷少霆は率先して挨拶した。将来の義父に対して、できる限り丁寧に接するのは当然だった。
「冷さん、こちらこそ」と唐雲帆は返した。彼らの関係については深く考えなかった。
しばらくの沈黙の後、唐雲帆が突然言った。「寧寧、私は全て思い出した」
顾寧は一瞬固まった。もちろん唐雲帆が何を指しているのかわかっていた。唐雲帆は思い出したのだ、18年前のことを。
顾寧は鼻先がつんとして、とても嬉しかった。彼が思い出したということは、顾蔓と正面から向き合えるということだ。「思い出してくれて、よかった。本当によかった」
「寧寧、すまない」と唐雲帆は謝罪した。
以前にも顾寧に謝罪はしていたが、それは唐雲帆としての謝罪だった。今回は'寧ちゃん'として、顾寧の実の父親としての謝罪だった。
ここは郊外で、天上人間は市の中心部にあるため、距離がかなりあった。さらに途中には多くの信号があり、一行が天上人間に到着するまでに30分以上かかった。
天上人間に着いたとき、唐雲帆は眉をひそめた。「キリン団?」
「はい、母を連れ去ったのはキリン団の人間です。でも小物の親分が請け負った仕事で、金をもらって動いただけです。私はキリン団の親分の戚天麟と少し知り合いで、この件を話したら、彼が止めてくれました」と顾寧は説明した。
「何?お前が戚天麟を知っているのか?」この言葉に、唐雲帆は驚いた。戚天麟とはどういう人物か、マフィアのボスではないか!