第599章 力があるなら、奪ってみろ！

「わかりました！でも、社長さまは秘書を雇った方がいいと思います。自分で運転して、自分で荷物を持って、社長らしさが全然ないですよ」蘇瞳諾は冗談半分、真面目半分で言った。彼女は顧寧のことを心配しているだけだった。「林夏に持たせましょう！」

蘇瞳諾は外での印象を気にする必要があったので、自分では持てなかった。

「社長、私が持ちましょう！」林夏はすぐに前に出て、顧寧の箱を持とうとした。

「いいえ、私が持ちます。中に入りましょう」顧寧はそう言って先に歩き出し、他の人々も直ちに後に続いた。

顧寧が必要ないと言ったので、林夏は当然無理強いできなかった。

しかも明らかに、その箱は宝石箱で、林夏も軽々しく触れなかった。

一行が大きなビルに向かって歩いていると、若い男性が彼らの方に歩いてきて、顧寧の前で丁寧に尋ねた。「顧お嬢様でいらっしゃいますか？」

「はい」顧寧は答えた。

「顧お嬢様、こんにちは。私はカメラマンの費南のアシスタント、陽超と申します。お迎えに参りました」陽超は丁寧に言い、そして顧寧の手元に目を向けて尋ねた。「顧お嬢様、私がお持ちしましょうか？」

「結構です。中に入りましょう」顧寧は断った。

そういうことなら、陽超もこれ以上は主張せず、「では、皆様どうぞ」と言った。

そして一行は中に入った。

しかし、撮影スタジオに近づくと、中から騒がしい声が聞こえてきた。

「費南さん、休暇を取ると言ったじゃないですか？私の撮影のために一日空けてほしいと言ったら、時間がないと言って、今日また来るなんてどういうことですか！」怒りに満ちた女性の声が詰問した。

「時間がないと言ったでしょう。今から仕事を始めようとしているのが見えないんですか？」男性は不機嫌で苛立たしげに反問した。

沈芮瑩は唐皇エンターテインメント所属のタレントで、デビュー3年で二線に上り詰めた実力派の女優だった。しかし、急速な成功で傲慢になり、元々の控えめな性格が今では高慢で自惚れるようになっていた。

「知りません。今日は絶対にあなたに撮影してもらいます。他の人は、他のカメラマンに任せればいいでしょう」沈芮瑩は非常に横暴に言った。

費南は唐皇エンターテインメント社の首席カメラマンで、多くのスターが彼に撮影を依頼したがっていた。