005 彼は彼女にキスをした

彼は彼女の苦痛を気にかける暇もなく、無遠慮に求めた。

　　彼にとっては、ただの情事に過ぎず、この事に時間を浪費するのを好む男はいない。まして感情のない女性を相手にするなんて！

　　憐れみ深く女性を大切にする？

　　彼は彼女の雇用主であり、彼女に相当な報酬を与えた。この痛みは、彼女が当然受けるべきものだ。

　　その痛みは、彼女の胸に溜まった悔しさや辛さと相まって、涙となって激しく流れ出した。

　　彼女は痛みで声を上げ、目の縁が赤くなったが、唇を噛んで弱い面を見せまいとした。しかし、あまりにも激しい攻めに耐えられず、深呼吸を繰り返し、次第に我慢できなくなり、断続的にすすり泣き始めた。

　　「うぅうぅ……」最後には、まるで子猫のように啜り泣いた。

　　男は冷酷な皇帝のように、ほとんど残酷なまでに彼女のすべてを奪った。

　　際限のない痛みは、海上の荒々しい波のようで、溺れる中、揺れ動いていた。

　　忘我の境地に入り、彼女の視線は次第に遠くなり、震える五本の指を広げたが、つかめるものは何もなく、目の前は真っ暗で、意識は混沌としていた。

　　完璧な一体感。

　　汗が二人の体を熱く濡らし、慕雅哲は指を彼女の髪に深く差し込み、まるで骨の髄まで味わっているかのようだった。

　　彼女は意識朦朧としながら、ひたすら懇願した。

　　情欲の中、彼は突然首筋に熱い湿り気を感じ、少し顔を上げると、彼女が唇を噛みしめ、痛みで声を押し殺して泣いているのが見えた。

　　慕雅哲のハンサムな顔が一瞬凍りついた。我慢している小さな顔を見つめ、思わず顔を近づけ、彼女の唇に重く口づけした。舌先が彼女の口に侵入し、その丁香のような小さな舌を捕らえ、絡み合わせ、すべての啜り泣き声を飲み込んだ。

　　キス、それは彼にとってタブーだった！

　　キスは、互いに愛し合うことを意味する！

　　彼は決して女性にキスをしなかった。彼の目には、女性の唇は非常に汚いものだった。彼の周りにいる女性たちは、いつも名家の令嬢か、さもなければ芸能界の女優だった。なぜなら、彼は一度も女性に触れたことがなかったからだ。しかし、なぜかわからないが、この女性にキスをしてしまった。

　　正確に言えば、これが彼の最初の女性で、キスの味がこんなに美味しいとは知らなかった。

　　慕雅哲は目を細め、彼女を押さえつけ、息苦しいような抑圧の中で、毒を飲むように渇きを癒した。

　　ベッドの上で、激しく絡み合う。

　　骨の髄まで沈み込む……

　　……

　　雲詩詩は暗闇の中で目を開けた。目の上の赤い絹のリボンは、すでに冷や汗で濡れていた。

　　耳元には浴室のシャワーの音が聞こえてきた。

　　彼女は少し体を動かしたが、指先に鋭い痛みを感じた。先ほどの情事の最中、彼女の指がベッドの端をきつく握りしめ、爪が割れて指先に刺さっていたのだ。

　　彼女は気軽を装って自分を慰めた。すべてが過ぎ去った、すべてが終わったのだ……願わくば、今回で妊娠できますように。

　　彼のために子供を産み、お金を手に入れたら、ここを離れて自分の生活に戻ることができる。

　　今は、もう未明だった。

　　慕雅哲はシャワーを浴び、服を着替え、高くて大きな体で部屋に立っていた。非常に圧迫感があった。彼は冷たい目つきで、月明かりの下、女性が真っ白な寝具に包まれ、体を丸めて息を切らしているのを見た。滑らかな肌には、彼が残した乱暴な跡が残っていた。

　　そしてベッドの上の血痕は、まるで咲いた血色の蕾のように、目を引く衝撃的な光景だった。

　　雲詩詩はベッドの上で動かず、彼に背を向けて、震えながら体を丸めていた。まるで石のように硬直していた。彼は彼女を見つめた。乱れた髪が枕元に散らばり、汗で濡れていた。

　　彼は冷たく彼女を一瞥し、しばらく立ち尽くした後、背を向けて去っていった。