016 貴重な寵愛

ちびっ子も敏感で、慕雅哲以外の誰に対しても疎遠な様子。普段は父親と同じ型から作られたかのように、いつも冷たい表情で、笑わず、大人びた様子で、この年齢の子供らしくなく、極めて成熟している。

3、4歳の頃、慕雅哲が彼と過ごす時間が多かった。彼は小悪魔のように、いたずら好きで、よく慕邸のメイドをからかい、完全な跡取り息子だった。

しかし、ここ2年で慕氏財團の仕事が忙しくなり、慕雅哲も多忙になった。普段父親が側にいなくなり、ちびっ子は次第に寡黙になり、あまり話さなくなった。

時々、慕婉柔はこの小さな顔を見ると、若かりし頃の慕雅哲を思い出さずにはいられなかった。同じように冷たい表情で、誰も近づけなかった。

しかし、慕雅哲に対してだけは、やはり子供らしさを見せ、甘えたり、時々悪さをして彼の注目を引こうとする。慕雅哲も彼を甘やかし、許すので、彼の前では奕辰くんはいつも思いのままだった。