145 美貌も実力の一つ

楊芈……芸能界の新人たちは彼女のことを芈ねえさんと呼んでいた。

  同期のタレントたちでさえ、彼女を非常に恐れていた。

  それは彼女の巨大なファン層だけでなく、彼女のバックグラウンドが人々を畏怖させていたからだ。

  雲詩詩は少し呆然としていた。この楊芈とは面識がないのに、どうして急に彼女の名前を呼んだのだろうか?

  まだ困惑していたとき、楊芈と唐羽が彼女の前に歩み寄ってきた。彼女の不思議そうな表情を見て、楊芈は高慢に冷笑し、隣の唐羽は皮肉っぽく笑いながら言った。「どうした?初めてこんな大きな場に来たんだろう。大物アイドルを見て興奮しすぎて、頭が真っ白になっちゃったの?」

  「そんなことありません。」雲詩詩は微笑んだ。

  「じゃあ、なぜ『芈ねえさん』って一言も言わないの?」唐羽は目を回した。

  来る者は善からずだな。

  雲詩詩は笑って、おとなしく言った。「芈ねえさんが今夜あまりにも輝いていて、美しいドレスを着て、普段画面で見るイメージよりもさらに数倍美しいからです。」

  楊芈はこれを聞いて、やっと彼女をまともに見た。数句の甘い褒め言葉が、確かに彼女の心に届いたようだ。「新人なのに、臆することもなく、口がうまいじゃない!」

  「ふん、お世辞ばかり!」唐羽は横で意図的に難癖をつけるように、皮肉を言った。

  雲詩詩はこれを聞いても恥じることも怒ることもなく、逆に微笑んで反問した。「これは心からの賞賛です。芈ねえさんの今夜の装いは本当に輝いていますよ。唐羽おねえさんはそう思わないんですか?」

  楊芈はこれを聞いて、不機嫌そうに唐羽を横目で見た。後者は慌てて弁解した。「馬鹿なこと言わないで、離間を図ろうとしているの?」

  雲詩詩は優しく笑って言った。「そんなことできるわけがありません。芈ねえさんは優秀な俳優で、唐羽おねえさんの演技も素晴らしく、芈ねえさんとは姉妹のように仲が良いのに、どうして離間を図れますか?それに、唐羽おねえさんも今夜は盛装していて、少しも引けを取りませんよ。」

  言外の意味があった。彼女の言葉の裏には、唐羽も今夜盛装して出席し、ひょっとすると楊芈と注目を奪い合おうとしているという暗示があった。