170 対峙

これは好きと言えるのだろうか?

  初めて会った時、彼は彼女に対して何とも言えない感情を抱いた。

  この女の子はとても清らかで俗世離れしていて、世俗に染まっていないように見えた。彼は彼女をしっかりと守り、世俗の汚れから遠ざけたいと思った。

  ヒロインオーディションの時、彼女の演技はとても迫力があり、その場にいる全ての人を引き込んでいた。彼はまるで自然と尹冬宇の役に入り込み、彼女を抱きしめて、どんな傷つきからも守りたいと思った。

  彼女の一挙手一投足が、まるで彼の脳裏に深く刻み込まれ、消えることがなかった。

  これは好きなのだろうか?

  もしそうでないなら、なぜ彼は彼女のことをそんなに気にしているのだろう?単に、彼女が才能と可能性を持った将来のスターだからだろうか?

  顧星澤は頭が割れそうに痛み、壁に寄りかかり、顔を深々と手のひらに埋めた。内心は苦しい葛藤に陥っていた……

  どれくらい待ったかわからない。時間はまるで止まったかのように長く感じられた。

  顧星澤は何度も部屋に入ろうとしたが、ドアの前まで来ては引き返してしまった。

  また長い時間が過ぎ、廊下の端から整然とした足音が聞こえてきた。

  彼は音の方を見ると、一群のウェイターがトレイを丁重に持って大統領スイートにゆっくりと近づいてくるのが見えた。トレイの上には、いくつかの新しく華麗なドレスと精巧なアクセサリーが並んでいた。

  群衆の中に、ELANの姿もあった。

  ELANも彼を見て驚いた様子で、目つきが少し変わった。「星澤……なぜここにいるの?」

  「君は何をしに来たんだ?」顧星澤は彼女を見つめ、眉間にしわを寄せた。

  「社長の命令で、ある女性の宴會用の装いをするために来ました……」ELANも賢明な人間で、顧星澤の非常に暗い表情を見て、突然良くない推測をした。「中にいるのは……雲さんじゃないでしょうね」

  「黙れ!」顧星澤は突然怒り出した。

  ELANはすぐに口を固く閉じ、これ以上何も聞こうとしなかった。

  女性は本当に毒薬だわ。見てよ、いつもは優雅で冷静な顧星澤をこんなに理性を失わせるなんて。この雲詩詩って一体何者なの?

  突然、部屋の中から物音がした。