186 観客を魅了する

「パパ……」奕辰くんが突然胸に手をやり、眉間にしわを寄せた。「胸がちょっと苦しいの」

「どうしたんだ？」慕雅哲の顔に心配の色が浮かんだ。「また胸が苦しくなったのか？」

奕辰くんは戸惑いながら唇を噛み、甘えるように言った。「わからない、ただ苦しいの。重くて、酸っぱくて、とても辛いの」

慕雅哲が彼の小さな頭を撫でていると、そのとき入り口で再び大きな騒ぎが起こった。

「なんてこった！美しい……」

パーティーのレッドカーペットの終わりで、熱心なメディアが再び押し寄せた。

雲詩詩は優雅で魅力的な笑顔を浮かべ、顧星澤の腕を取りながら優雅に入場した。

彼らがカメラの前に現れた瞬間、驚嘆の、妬みの、軽蔑の、疑問の目線が四方八方から彼らに注がれた。

特に雲詩詩の目を引く豪華なドレスと、彼女の鎖骨に輝く華やかなルビーのネックレスに注目が集まった。

雲詩詩は豪華な赤いドレスを身にまとい、みずみずしい赤いバラのように美しく、精巧な顔立ちは生き生きとしていた。

彼女が顧星澤と並んで立つと、否応なしに認めざるを得なかった。一目で、とてもお似合いだった。

顧星澤はいつもファッション界の寵児で、背の高い体型、魅力的なハンサムな顔。どんな女優が彼の隣に立っても、彼の輝きに負けてしまうようだった。

しかし、この雲詩詩は違っていた。彼と並んで立っても、彼の華やかさに隠れることなく、むしろより一層目立っていた。メディアは興奮して頭を寄せ合っていた。

「わ、わわわかった！彼女は先ほど顧スーパースターと一緒に入場した新人じゃないか？」

「そうそう！雲詩詩っていうんだ！さっき名前を聞いたんだ。とても才能のある新人だって。演技がすごくいいらしいよ！」

「林監督が抜擢した主演女優だって！林監督の目利きはみんな知ってるだろ。厳しいんだよね。林監督に認められるなんて、きっと並じゃない新人なんだろうな！」

驚嘆と賞賛が波のように彼らに押し寄せた。

雲詩詩は心の中で少し不安を感じながらも、顔には相変わらず魅力的な笑みを浮かべ、メディアの要求に応じて立ち止まり、顧星澤と腕を組んでフラッシュを浴びた。