195 慕婉柔の恥辱（4）

まるで心全体が、あの男に奪われてしまったかのようだった。

　　うっかりしている間に、また同じ過ちを繰り返してしまった。歴史は繰り返されたのだ。

　　雲詩詩は顧星澤の、彼女に二度も踏みつけられた手作りの革靴を見下ろし、目に溢れんばかりの後悔の色が浮かんだ。

　　「詩詩、集中力が欠けているね」顧星澤は眉をひそめ、ダンスのリズムを少し緩めた。

　　「私は...そんなことは...」

　　無力な言い訳をしながら、彼女も自分に腹を立てていた。

　　なぜ、どうして急に上の空になってしまったのだろう？

　　先ほどの慕雅哲と慕婉柔が優雅に踊る光景が、まるで棘のように彼女の心に刺さり、痛くて、むずがゆかった。

　　雲詩詩が顔を上げ、まだ言い訳を考えあぐねていると、突然視界の端に慕雅哲が慕婉柔の手を引いて近づいてくるのが見えた。

　　驚く暇もなく、慕雅哲が軽く慕婉柔の腰を押し、自然に雲詩詩の左手を取り、彼女を一気に自分の腕の中に引き寄せるのを目にした。

　　慕婉柔が反応する間もなく、瞬時に顧星澤の側に押しやられ、やっと我に返った時には、慕雅哲がすでに雲詩詩の手を取ってダンスフロアの中央へ歩いて行くところだった。

　　彼女は怒りに駆られたが、その場で発作を起こすわけにもいかなかった。結局のところ、重要な来賓が大勢いたので、彼女は嫌々ながらも笑顔を保ち、顧星澤の方を向いて手を差し出すしかなかった。

　　しかし顧星澤は彼女を見向きもせず、氷のように冷たい表情で慕雅哲と雲詩詩の方向を見つめ、その表情は次第に凍りついていった。

　　「星澤...」

　　慕婉柔は思わず居心地が悪くなった。

　　せめて、このダンスを続けてほしい！

　　そうでなければ、ダンスフロアでパートナーに見捨てられるなんて、なんて恥ずかしいことだろう！

　　特に、彼女はさっきまで皆の注目を集めていたのに、今捨てられて、しょんぼりと退場したら、きっと全員に笑われてしまう。

　　彼女は少し焦り、催促した。「星澤！」

　　顧星澤は冷淡な顔で振り向き、宙に浮いたまま固まっている慕婉柔の手と、彼女の絶え間ない目配せを見たが、無表情に言った。「お断りします」