こんな近い距離に、彼女は本当に居心地悪くなってきた!
目の前の妖艶な美顔を見つめ、雲詩詩は少し戸惑いながら彼の胸を押した。この男、元々は静かに座っていたはずなのに、どうして急に彼女を……
この車の中にはまだ人がいるのに!
彼女は戸惑いながら顔をそらしたが、彼の長い指にあごをしっかりと掴まれ、無理やり彼の顔に向けられた。彼女は強制的に彼の顔を見つめ、痛みで目を細め、かすかに潤んできた。柔らかな赤い唇は透き通るように輝き、まるで美味しそうなサクランボのようだった。
彼女の唇を奪うと、想像以上に素晴らしかった。
一度キスすると、もう止められなくなった。
優しく舐めるように、彼は興奮してきた。
「もういい!慕雅哲!!」
「まだ足りない!」
「あなた——」
雲詩詩は恥ずかしさと怒りで、もがき、思わず体を震わせた。
白い頬に恥じらいの紅潮が浮かび、却って更に魅力的に見えた!
慕雅哲はこの心を奪う光景を見つめ、本当にこの少女を見誤っていたと思った。かつては彼女を貓ちゃんに例えていた。
今考えると、彼女は明らかに美しく妖艶なケシの花だ。人を抗えずに深みにはまらせ、そして夢中にさせる!
雲詩詩はこの突然の行動に驚いた。まだ車の中で、運転手も前に座っているのに、この男は、人前でこんなことをするなんて?!
少し戸惑い、それ以上に恥ずかしさを感じ、彼女は懸命に彼の胸を押した。しかし、彼女の弱々しい力は、慕雅哲にとってはまったく問題にならなかった。
ただ一手で彼女の手首を縛った。
「離して……離して!」
彼女は小さく息を切らしながら、少し怒って彼を睨みつけたが、男は動じなかった。
彼女の唇にぴったりと寄り添い、彼は眉を上げた。「君はこうして欲しかったんだろう?」
雲詩詩は冷笑し、彼を横目で見た。「何を言ってるの?意味不明よ!」
慕雅哲の目に揶揄の色が浮かんだ。
「君が俺を誘惑してるんだ、こうして欲しいんだろう……」
口調に妖艶さが混じった。
蘭の気息が彼女の耳元に吹きかけられた。
かれはいつも我が道を行く男で、自分を束縛したり抑圧したりするのを好まなかった。