530 慕家は龍潭虎穴

「……」

「慕婉柔の正体を知らないはずがないでしょう?!彼女がどんな人物か、とっくに分かっているはずよ!」

「知っている」

雲天佑は一瞬驚いた:「なぜまだ手を出さないの?」

「この件は、お前には関係ない!」

慕雅哲はこのちびくんがどこから情報を得たのか分からず、驚きながらも、その手腕の凄さに震撼した。

どうあれ、雲天佑にこの件に関わってほしくなかった。

これは男としての自分がすべきことであり、当然息子に出しゃばらせるわけにはいかない。

雲天佑は冷ややかに鼻を鳴らした:「関わりたくもない」

どうせ、慕婉柔の正体を暴いたところで何になる?

彼はママがあの慕家に戻り、いわゆる慕家のお嬢様になることを望んでいなかった。

そんなの御免だ!

地位も、権力も、財力も、慕家にあるものは彼にもある。慕家に戻ることはママにとって必ずしも良いことではない。

あの慕おじいさまに会ったことがないわけではない。最初から心の底から好きになれなかった!

彼はいつも、この慕晟が単純な人物ではないと感じていた。その目から、雲天佑は多くのものを見て取った。

直感が告げている。慕家に戻ることは、ママにとって、利よりも害の方が大きいと。

李翰林は慕婉柔の背景を調べた後、もう一つの事実を突き止めた。雲詩詩が九歳の時に交通事故に遭っていたのだ。

その事故は非常に悲惨で、車に乗っていた三人のうち、一人は死亡、一人は負傷、もう一人は行方不明となり、消息を絶った。

聞くところによると、雲詩詩のおかあさんはその事故で亡くなり、車も人も無残な最期を遂げたという。

しかし李翰林の調査によると、その事故は単なる偶然の事故ではなかった。

李翰林の聞いたところでは、以前、慕晟は養女の慕傾城を非常に可愛がり、溺愛していたという。

慕家代々伝わる金彫りの玉札は男子にしか伝えられず、後継者にのみ渡されるものだった。

当時、慕連城は慕家の確実な後継者だったが、慕晟はこの玉札を慕傾城に身につける信物として与えた。慕傾城の彼の心の中での地位は想像に難くない。

その後、慕傾城は密輸の大物と恋に落ち、未婚のまま妊娠し、慕おじいさまを激怒させ、胎児を堕ろすことを強要された。

慕傾城は従わず、慕家を離れ、それ以来姿を消し、行方は分からなくなった。