電局に向かう途中、唐寧は途中で降りて薬を買い、温かい水を持ってきて墨霆が飲むのを見届けてやっと安心した。墨霆は彼女の心配そうな様子を見て、唇の端に微笑みを浮かべた。「もう薬を飲んだよ。まだ怒ってる?」
「じゃあ、次に同じようなことがあったら、また私に言わないの?」唐寧は真剣な眼差しで彼を見つめて尋ねた。
「あなたが強くて、何でも完璧にこなせて、いつも輝いている姿を見せていることは分かっています。でも、本当の夫婦というのは、あなたが一番私を必要とする時に、私があなたのそばにいられることなんです。あなたにとっては些細なことかもしれないけど、私はやっぱり心配になってしまうの……」
「墨霆、私が求める愛はそんなに複雑じゃないの。私を気にかけてくれる人、私が気にかける人がいること。それだけよ。」
墨霆はこの言葉を聞いて2秒ほど沈黙した後、手を伸ばして唐寧を抱きしめた。「もう二度としないよ……全部君の言う通りにするよ。」
唐寧は墨霆の胸を軽く叩いた。それは無言の抗議のようだったが、すぐに彼の腰をしっかりと抱きしめた。
エンターテインメントキングダムの帝王として、冷酷な決断力は彼の常態だった。結局のところ、これは残酷な世界であり、芸能界は他のどの業界よりも現実的だった。彼は偽装するまでには至っていなかったが、確かに素顔を見せるのは好まなかった。しかし、腕の中にいるこの小さな女性は……
ほんの些細な風邪でさえ、彼女をこんなにも心配させることができる……
まるで人と人との間の最も原始的で純粋な姿を、彼の目の前に展開しているかのようだった。
そうだ……好きな人のために、ただ愛し、甘え、怒り、与えればいいんだ。なぜ自分が最も好きな人の前でさえ、こんなにも頑張らなければならないのだろう?
二人は静かに温かく抱き合っていた。まるでお互いの体温を吸収しているかのようだった。そして、唐寧の携帯電話で7時50分のアラームが鳴った。ラジオ局の会議がまもなく始まるのに、彼女はまだ途中だった……
唐寧は眉をひそめたが、何も言わなかった。しかし、墨霆は彼女の手から携帯電話を奪い取り、彼女に言った。「君に迷惑はかけさせないよ……」
……
ラジオ局の会議室。