墨霆の言葉を聞いて、唐寧は心温まる笑みを浮かべた。そうだね……
好きというのは時にこんなにも単純なことなんだ。あなたがしたいことを、私が一緒に付き添うだけでいいんだ。自分にとって何が一番大切か知って、それに尽くせばいいんだ。
「ご飯食べた?」
「使用人に作らせるよ。君は明日も仕事だから、早く休んで」墨霆は彼女をソファーから引き上げた。
「ショーは明日の夜だから、急ぐ必要はないわ」唐寧は逆に墨霆を押し返した。「お風呂に行って。私が作るから、すぐできるわ」
墨霆は彼女に対して為す術がなく、彼女の積極性を打ち砕きたくなかったが、それでも一言付け加えた。「やけどしないように気をつけて!」
「墨社長、私を子供扱いしているみたいね?それに、妻としての楽しみを奪わないでよ」
墨霆は彼女を無力な目で見た。外では鉄壁の唐寧も、彼の前では本当に子供のようだった。結局、墨霆が妥協して寝室に入りシャワーを浴びた。彼が素早く身支度を整えてダイニングに戻ると、テーブルには香り立つ麺が置かれており、唐寧が彼のために椅子を引いていた。
墨霆の胸が膨らんだ。この素朴な幸せがとても貴重に感じられた。いくら大金を持っていても、どれだけ大きな権力を持っていても、大切な人が自分のために香り高い麺を作ってくれることには及ばない。
「気に入らない?」
墨霆は首を横に振り、椅子に座って満足そうに食べ始めた。
唐寧は彼の隣に座り、尋ねた。「仕事以外に、他の娯楽活動をしているのを見たことがないわ」
「空き時間があれば、映画を1本見る程度だね」墨霆は小声で言った。
「じゃあ……食べ終わったら一緒に見る?どうせ家で見られるし……」唐寧は提案した。
「先に言っておくが、俺の好きなものは君の好みじゃないかもしれない」
「それが何か問題?」
実は唐寧はこれを見よう見まねでやっていた。墨霆の「私が一緒に付き添う」という言葉が、彼女に大きな影響を与えたのだ。最近は墨霆が彼女に付き添っていたので、今度は彼女も墨霆のことをもっと知りたいと思ったのだ。