第330章 オーディション

唐寧は無理強いしなかった。ただ淡々と微笑むだけだった。

  いわゆる芸能界には、演技力と人気の両方を持つ者、演技力はあるが人気がない者、人気はあるが演技力がない者の3つのカテゴリーがある。映画男優賞受賞者の林聲は明らかに1つ目のカテゴリーに属するが、唐寧は...3つ目のカテゴリーにも入れるのは無理があるだろう。

  「大丈夫です。彼はいつもこんな几帳面な性格なんです。」副監督は唐寧に言った。唐寧が怒って墨霆に告げ口するのを恐れてのことだった。

  唐寧は軽く笑い、そして振り向いて赫爾監督を見た。赫爾は友好的に彼女と握手し、フランス語で言った。「最初から言っていたでしょう。あなたは運命づけられているのだと。」

  「一度演技をさせていただけませんか。撮影クルーの皆さんに、私の去就を決めてもらいたいのです。」唐寧は真剣に赫爾に頼んだ。

  「実際、あなたには全く必要ないのですが。」

  「チーム全体を団結させたいのです。少なくとも、『おろかな弟子』の進行や質に影響を与えたくありません。また、皆さんに私を認めていただきたいのです...」唐寧は平静に説明した。

  赫爾は彼女の目を見て、彼女が何をするにしても100%真剣な態度で臨もうとしているのを感じ取り、ただうなずいて同意するしかなかった。「では、リハーサル室に行きましょう。撮影クルー全員で。」

  「ありがとうございます。」

  一般的に、フランス語を理解できる人は少ないので、唐寧が何をしようとしているのを本当に知っているのは何副監督だけだった。これも墨霆が彼を雇った理由で、赫爾監督の生活の不便さや言葉の通じなさを解決するためだった。赫爾は英語でもそれほど大きな問題はなかったが。

  唐寧は本当にオーディションを受けようとしていた。そして大胆にも、撮影クルーに自分の去就を決めさせようと提案した。彼女は知らないのだろうか、この撮影クルーの全員が演技派だということを?彼女は本当に提案する勇気があったのだ!

  しかし、唐寧は少しも動揺を見せず、赫爾の指示に従い、全員と一緒にリハーサル室に向かった。

  唐寧のカンニングを防ぐため、赫爾は元々岳珊珊のものだった183のシーンを、コード番号をつけて印刷し、唐寧にくじを引かせた。