第354章 まだ自分は冤罪だと思うのか？

西山別院、紅葉書房。

助手が携帯電話を唐老に渡した。「会長、海瑞社長からのお電話です。どうされますか…」

「私に渡しなさい。」唐老は香水のサンプルを置き、助手から電話を受け取り、助手に退出するよう合図した。

助手は恭しく退出し、その後、唐老は携帯を耳に当て、低く渋い声で「もしもし」と言った。

「唐さん、こんにちは。」墨霆の声は低く、危険な雰囲気を漂わせていた。

「お前が私の孫娘と付き合っている男か？」唐老は単刀直入に尋ねた。

「私は墨霆です。」墨霆は謙虚にも傲慢でもなく唐老に挨拶した。二人の気迫は互角のようだった。確かに、唐老の方が年長で賢明だが、墨霆も同じく落ち着いていて測り知れない深さがあった。

「ふん、芸能界のようなごたごたした場所で、どこに本当の感情があるというのだ？」

墨霆は小さく笑い、唐老の軽蔑を全く気にせず、ただ尋ねた。「私はお宅に贈り物を送りましたが、お受け取りになられましたか？」

「何の贈り物だ？」

「私と唐寧の結婚について、お宅に贈り物を送りました。しかし、その後、私が池家の令嬢と結婚するというニュースが爆発的に広まりました…」

「何が言いたいんだ？」唐老は冷たく問い返した。

「池家と唐家は、良好な関係にあるはずです。私は以前、池さんと少々誤解がありましたが、もしそのために老爺があなたに私について誤解させたのであれば、私は説明できます。唐寧を傷つけるために、事実無根の噂を流す必要はありません。」墨霆の声は唐老よりも冷たかった。「あなた方が寧の存在を無視したいのなら、そういう人はいないことにして、私が彼女に優しくすることを妨げないでください。」

墨霆のこの言葉は、非常に巧みだった。

まず、贈り物を送ったことを説明し、その後悪い噂が広まったこと、そして暗に池家と唐家がリソースを共有していることを示唆し、この件が唐家と無関係ではないことを匂わせた。

「小僧、お前はまだ目上を敬う心を知らんのか？」唐老はこのような質問を受けたことがなかった。

「失礼があったらお許しください。もし本当に唐寧をお孫さんとして認めたくないのなら、彼女を完全に私に任せてください。」そう言って、墨霆は電話を切った。