雨の夜。
墨霆が豪華な車を手配し、母娘二人をホテルまで送った。
夏玉玲は悲しみを乗り越え、唐寧に付き添われて生き生きとした様子を見せていた。人の雰囲気は内面から決まるもので、善良な人は必ず菊のように淡々として、清らかで超然としているように見える。
ここは五つ星ホテルで、芸能人たちが好んで利用する場所だ。それにもかかわらず、唐寧と夏玉玲の登場は周囲の人々の注目を集めた。
夫の不正を暴いた女性、娘を守る母親、彼女が放つ輝きは人々の目を引いた。
「お母さん、一緒にデビューしちゃう?みんなお母さんを見てるよ」唐寧は思わず小さく笑った。
「お母さんはもうそんな歳じゃないわよ。冗談を言うなんて」夏玉玲は思わず微笑み、そして周りを見回した。「墨霆は?」
「他に用事があるんだって。お母さんの婿はなくならないよ!」唐寧は母を取り戻し、珍しく心を開いた。「心配しないで、すぐに来るから…」