第394章 私が入ったら唐萱は出ていかなければならない

雨の夜。

墨霆が豪華な車を手配し、母娘二人をホテルまで送った。

夏玉玲は悲しみを乗り越え、唐寧に付き添われて生き生きとした様子を見せていた。人の雰囲気は内面から決まるもので、善良な人は必ず菊のように淡々として、清らかで超然としているように見える。

ここは五つ星ホテルで、芸能人たちが好んで利用する場所だ。それにもかかわらず、唐寧と夏玉玲の登場は周囲の人々の注目を集めた。

夫の不正を暴いた女性、娘を守る母親、彼女が放つ輝きは人々の目を引いた。

「お母さん、一緒にデビューしちゃう?みんなお母さんを見てるよ」唐寧は思わず小さく笑った。

「お母さんはもうそんな歳じゃないわよ。冗談を言うなんて」夏玉玲は思わず微笑み、そして周りを見回した。「墨霆は?」

「他に用事があるんだって。お母さんの婿はなくならないよ!」唐寧は母を取り戻し、珍しく心を開いた。「心配しないで、すぐに来るから…」

「人を焦らすのはやめなさい。墨家の人が心配するわよ」

「私だって心配してるんだから」唐寧は夏玉玲の腕を取ってエレベーターの前まで歩き、係員の案内で個室の入り口まで来た。

「お二人どうぞ。他のお客様はすでにお揃いです」

夏玉玲は急に笑顔を引き締め、身構えるような様子を見せた。それを見て唐寧の表情も少し真剣になった。

そして、個室の扉が勢いよく開かれ、最初に目に入ったのは主席に座る唐老だった。杖を突き、滑らかな杖の表面を指で絶えずなでている様子は、怒っていないのに威厳があった。

唐欽文を見ると、完全に打ちのめされた様子で椅子にもたれかかり、虚ろな目をしていた。昼間に起こったことから抜け出せていないようだった。

唐藝晨と唐靖宣の二人は頭を下げて私語を交わし、唐萱だけが二人を見つめ、その表情には鋭く冷たい刺のようなものが感じられた…

夏玉玲は冷ややかに鼻を鳴らし、唐寧を連れて席に着いた。できるだけ夫の方を見ないようにしていた。

「玉玲や…」老人は寂しげに呼びかけた。その声は谷底から聞こえてくるかのように空虚で馴染みのないものだった。「まさかお前がこんな大きな秘密を隠していたとは思わなかった。この何年も、辛い思いをさせてしまって」