第433章 利用できるのではないか？

「一体どこが先輩の気に入らないのでしょうか。まさか、休暇を取っただけで、先輩は私の全人格を否定するのですか？」

　　「本当に自分の演技が顧姮より上だと思っているのか？私から見れば、君は彼女にはるかに及ばない！」墨おじいさんは椅子に座って軽く鼻を鳴らした。「不服そうな顔をするな。顧姮の演技は安定している。しかし、君は多くのシーンで力が入りすぎている。君は自分の才能を頼りに役になりきろうとしているが、忘れるな、正常な人間なら常に他人になりきることはできないんだ。」

　　「普通の人間が集中力を保てる時間は非常に限られている。だから、君の演技の水準は、すべてのシーンで顧姮を上回っているわけではない……」

　　「長期間他人になりきれる人間は、精神分裂でもない限りいない。」

　　墨おじいさんは唐寧の演技を厳しく評価し、良いところは一つも見出さず、ただ痛烈に批判した。

　　「それに……」

　　「君は何でも犠牲にする覚悟があるように見えるが、骨の髄まで清高さが染みついている。」墨おじいさんの言葉は厳しさを帯びていたが、唐寧の表情が変わらないのを見て、少し落ち着いた。「どうやら、自分のことをよくわかっているようだな。」

　　そうでなければ、他の人なら恥ずかしさと怒りで顔を赤らめていただろう。

　　唐寧はどうでもいいわけではなかった。ただ、墨おじいさんの言葉はすべて事実で、反論する根拠がなかっただけだ……

　　それに、彼女から見れば、このおじいさんには彼女を叱る資格があった。なぜなら、その実力は明らかだったから。

　　「まあまあだ。こんなに叱られても鼻で指さされて反論しないなんて、精神力はなかなかだ。」墨おじいさんは唐寧をちらりと見て、やっと少し良い顔を見せた。「今私に叱られるのは、後で観客に叱られるよりましだろう。」

　　唐寧はまだ黙ったまま、静かに墨おじいさんの言葉に耳を傾けていた。

　　撮影クルーはそんな二人を見ていた。正直なところ、墨おじいさんが唐寧を叱っているとき、彼女が立ち去ったり、他の驚くべき行動を取ったりするのではないかと心配していた。結局のところ、彼女の背後には墨社長がいるのだから。しかし、彼女はまるで素直に教えを受ける学生のように、先生に叱られても全く面目を失ったとは思わなかった。なぜなら、彼女は確かに間違っていたからだ。