第452章 子供を産めず、演技もできず！

数秒の呆然とした後、予想外の喜びが込み上げてきた。墨霆はまるで今すぐにでも唐寧を抱きしめ、彼女を強く腕に抱き寄せ、彼らがまもなく両親になることを伝えたいかのようだった。

唐寧のお腹から小さな生き物が出てくることを想像し、それが自分と血のつながりがあると考えると、全身の血液が沸騰するような感覚を覚えた。その誇らしさは、この瞬間、彼を頭からつま先まで包み込んだ。

父親……

これは彼がこれまで想像したことも、想像できなかった感覚だった。この感覚は、あまりにも不思議だった。

簡単に身支度を整えた後、墨霆は寝室を出た。ソファに座って果物を剥いている唐寧を見ると、すぐに彼女の手からナイフを取り上げた。「何も触るなと言っただろう？」

「ただ果物を剥いているだけよ」唐寧は、龍姉さんと一緒にこの血中hCG検査をしたことが、自分にとってどれほど大きな助けになるかを、この時点では全く知らなかった。彼女は墨霆の緊張に対して、ただ理解に苦しむだけだった。

「今日は、ナイフなどの物は片付けて、触らないでおこう」墨霆は、聞いてもあまり説得力のない言い訳を見つけ出し、唐寧がナイフを持つのを止めた。

唐寧は苦笑いしながらも、妥協して頷いた。「わかったわ、あなたの言う通りにするわ」

墨霆は唐寧の髪を撫で、その後キッチンに向かった。

まさか、医療スタッフ以外で、唐寧の妊娠を最初に知るのが自分になるとは思ってもみなかった。おそらく唐寧自身も予想していなかっただろう。

こう考えると、おそらく前回唐寧が深夜に帰ってきて、二人が何も対策をしなかった時のことだろう。

すぐに、陸澈がカイユエ・ディージンに到着した。しかし、墨霆が陸澈を見る目つきは、昨夜の電話の時ほど冷たくなかった。これに陸澈は非常に恐縮した。

「社長、すべての準備が整いました。いつでも出発できます」

陸澈の準備のもと、墨霆は唐寧を連れて黒い車に乗り込み、病院で全身検査を受けることになった。車中でも、墨霆は唐寧の右手をしっかりと握り、思わず口角を上げていた。

唐寧は彼の機嫌がいいことがわかった。結婚一周年の記念日だからだと思っていたが、実際は自分のお腹に小さな霆がいるからだとは、予想もしていなかった。

墨霆の表情が笑みを含んでいるのを見て、唐寧も心を和ませた。