「寧さん、午後は本当に出席しないんですか?」昼食後、唐寧と宋妍書がホテルを出る際、宋妍書が唐寧の後ろについて尋ねた。
「今その答えを明かしたら、唐萱のこの後の素晴らしい表情が見られなくなってしまうわ……」唐寧はコートの襟を直し、身を包み込んだ。
「思いもよりませんでした。寧さんは商談もこんなに凄いなんて」宋妍書は唐寧に感心した。
「もういいわ。私を家まで送って、それから洛星の面倒を見てあげて。彼の最近の様子はどう?」唐寧は車に乗りながら宋妍書に尋ねた。
「以前より、感情を隠すのが上手くなりました」宋妍書は小声で言った。「ただ最近は曲の依頼も多いし、新しいアルバムもまもなく発売だし、忙しくなれば、過去のことを考える時間も減るでしょう」
「妍書、靖宣はまだあの女性のことを忘れられないかもしれないけど、私と同じように、決して後戻りはしない人よ。彼の未来は、あなたに託したわ」唐寧は宋妍書に言い聞かせた。「私はお腹が大きくなって、どこに行くにも不便だし、公の場に出る機会も減っていくわ。だから、洛星のことをしっかり頼むわね」
「分かりました……」宋妍書は真剣に頷いた。「でも、『消えた家族』がもうすぐ公開されるそうですね……」
「そう?時が経つのは早いわね」唐寧は静かになり、この映画の撮影の細部を思い出した。
「また大ヒットになりますよ……」
唐寧は自分の腹部を撫でながら、これまでの信念と努力に対して、心から喜びを感じた。
「まずは唐しの件を片付けましょう」
宋妍書は微笑んで頷いた。「はい」
そして、彼女の眼差しからは唐寧への尊敬の念が見て取れた。それは男性に対する憧れとは全く異なるものだった。
しかし、唐寧は家に帰らず、直接海瑞に向かい、墨霆のオフィスに入った。
夫婦は目を合わせ、墨霆はすぐに椅子から立ち上がり、素早く唐寧の腰に手を回した。「聞いたよ、交渉の達人」
「恥ずかしくなかった?」
「君が私に恥をかかせるはずがないだろう?」墨霆は唐寧の頭に顎を乗せ、心から感嘆した。「君が気が向けば、海瑞の経営だって簡単にできると信じているよ」
夫婦二人の腹黒い性質は、お互いによく分かっていた。だから、これ以上の説明は必要だろうか?
……