墨霆は最初から最後まで真剣に見ていた。これは唐寧にとって本当の意味での初めての主演女優だったからだ。
唐寧は少し緊張して墨霆を見つめ、その後、彼の口元に優しい笑みが浮かぶのを見た。
「なぜそんな風に私を見つめるの?」
「あなたの意見が聞きたいの」と唐寧は答えた。「あなたが一番よく分かっているから。本当の役者をどう評価するべきか」
「墨奥様にそこまで崇拝されるとは、私の光栄ですね?」墨霆は手を伸ばして唐寧を抱き寄せ、彼女の頭の上に顎を乗せた。「実は何も言いたくないんです。なぜなら、会場の観客一人一人が、この映画に対する直接的な感想を表現していて、私もその一人に過ぎないからです」
「寧……君はもう十分よくやっている。これからはもっと上手くなれる。『奇妙な夫』で飛天獎の新人賞を取れるはずだ!」
これは墨霆の慰めではなく、本心だった。唐寧の実力は、彼の予想以上だった……
特に北辰東との演技の時、二人の緊張感は、観客に演技の凄みと興奮を感じさせた。
新人賞!
これは新人俳優が最も憧れるものだ。唐寧も例外ではなく、そうでなければ、彼女の目に期待の色は浮かばなかっただろう。
しかし、彼女の映画『奇妙な夫』が絶賛上映中のとき、メディアは突然爆発的なニュースを報じた。若手スター洛星が、彼より10歳年上の三流女優趙沁怡と交際中だというのだ!
さらに、二人が同じ車に乗っている写真も証拠として出回り、趙沁怡は洛星とカイユエ・ディージンに一緒に入ったとされ、その目的は唐寧の同意を得るためだったという。
「あの怡さん、約束を守る気がないみたいね」と唐寧は皮肉っぽく言った。
「そうとは限らない。彼女にはそんな度胸はないはずだ」墨霆は唐寧の目をじっと見つめて言った。「誰かに利用されているかもしれない」
「靖宣に任せましょう……」
今回、唐寧は介入して管理するつもりはなかった。
しかし、誰もが驚いたことに、唐靖宣はすぐに説明に出るべきだったのに。結局のところ、多くのファンは彼の若さとイケメンぶりに惹かれていたのだから、今回の噂は、しかも10歳年上とは、ファンの心を直接打ち砕くことになる。
「洛星さんが早く否定してくれることを願います」
「あんな年増が、なぜ私の洛星を台無しにするの?」
「洛星、目が見えないの?もしこれが本当なら、もうファンやめる!」