第586章 授賞式

「欲しいの?ねぇ?」墨霆は彼女を抱き上げ、優しくベッドに寝かせ、右側から彼女の上半身を固定した。

唐寧は真剣な眼差しで墨霆を見つめ、特にこんな時は、墨霆への深い愛と執着を少しも隠さなかった。「欲しい...ずっと欲しかった、いつも欲しかった。」

墨霆は唐寧の耳元の髪を優しく払いのけ、そしてシャツを引き裂き、散らばったボタンも気にせず、逞しい体を起こした。このような時でさえ、彼は威厳のある帝王のようだった。

唐寧はやはり唐寧で、妊娠していても彼女の完璧さは損なわれず、むしろより魅力的になっていた。

唐寧が妊娠しているため、激しい動きはできず、絡み合う体は、ゆっくりとした摩擦だけだった......

「ドレス...」

「私の愛撫が足りないのかな?まだドレスのことを気にかけているの?ん?」

......

この数日間。

唐萱は自分の行動が墨霆に監視されていることを全く知らなかった。彼女が唯一忘れられなかったことは、恐怖だった。

特に葉嵐と楊熙の末路を見て、この瞬間、彼女の頭の中では、必ず上手く隠れなければならない、絶対に唐寧に見つかってはいけないという狂気じみた考えが渦巻いていた。実際、唐寧は授賞式のため、まだ彼女を処分する時間を取れていなかっただけだった。

彼女は唐寧より先に妊娠していたので、お腹は唐寧より丸みを帯びていた。もちろん、彼女の日々は想像したほど良くはなかった。以前の贅沢な生活のせいで、たった二百萬では彼女の派手な生活には足りなかった。隠れていても贅沢な食事を忘れなかったため、これが陸澈の捜索に多くの有利な手がかりと条件を与えることになった。

この時、彼女は静かな小島に隠れていた。もちろん、最近の浪費で、高級ホテルから一般住宅地に引っ越さざるを得なくなっていた。安全が保障されていないため、時々地元のチンピラに嫌がらせを受けていた。しかし、唐寧と墨霆に見つかるよりは、明日の保証のないこのような生活に耐えることを選んでいた。

さらに滑稽なことに、まだ形になっていた彼女の住処のベッドの下から大量の偽造貨幣を見つけ、少しでも生活を楽にしようと、その偽造貨幣を持って、発見されにくい年配の男性や女性を騙ることに専念していた。