第604章 必ずこの役を手に入れる

樺文鳳は墨霆の二人が去っていくのを見つめ、表情は険しかった。墨霆が唐寧をこれほど寵愛しているとは思いもよらなかったからだ。

「文鳳、これからの日々は大変になりそうね」老教授は軽く鼻を鳴らした。普段から高慢な性格が染みついていたため、墨霆の言葉を本当には受け止めていなかった。「きちんと教育しないと、この女は将来、墨家を滅ぼすことになるかもしれないわ」

樺文鳳は何も答えず、ただその瞳に静かな冷たさが宿っていた。

……

帰り道で、墨霆は唐寧を上から下まで見つめ、何か傷つけられていないか心配だった。これまで何度も唐寧が謀られかけたことで、墨霆はかなりのトラウマを抱えていたのだ。

「大丈夫よ」唐寧は墨霆の手を握りながら言った。「何ともないわ」

「これからは彼女からの誘いは、どんな場面でも、出たくないなら断ればいい」墨霆は明らかに、先ほどの老教授が唐寧を侮辱したことを気にしていた。

唐寧は頷いたが、突然、樺文鳳が腹の中のベイビーの性別を探ろうとしたことを思い出し、その経緯を一部始終、墨霆に話した。

墨霆は聞き終えると、長い間黙っていた。ただ長い指で唐寧の膨らんだ腹部に優しく触れ、目を閉じてその血のつながりの微妙な感覚を感じ取っていた。

「分かった」

墨霆の「分かった」という言葉は、唐寧が手を出す必要はなく、彼が適任者を手配して事態を徹底的に調査するという意味だった。

「彼女が何をしようとしても、何をしたとしても、怖がる必要はない……」

「私が怖がったことなんてあった？」唐寧は墨霆の胸に寄りかかり、軽く口角を上げた。

墨霆が頭を下げ、唐寧の黒髪に軽いキスをしようとした時、唐寧の携帯電話が彼の動きを遮った。

唐寧は龍姉さんからの電話だと分かると、すぐに墨霆の腕から身を起こし、電話に出た。

長い間龍姉さんに会っていなかったので、今どうしているのか気になっていた。

「唐寧……」龍姉さんは相変わらず陽気な様子だったが、声には警戒心も混じっていた。「今どこにいるの？ボスはそばにいる？」

「もちろんいるわ」唐寧は頷いた。