第170章 寧夕のはずがない

「寧夕?どこ?どこにいるの?」

「寧夕が来たの?まさか!本当に現れるなんて!」

「あそこだ!あそこ!」

……

一瞬にして全ての記者が振り向き、競って撮影機材を構えて写真を撮ろうとした。

寧夕は眉をひそめ、まず小包子ちゃんを守ろうとした。彼を驚かせないように。自分のことは気にしなかった。

しかし、小包子ちゃんを抱き寄せる前に、突然大きな手が彼女の頭を温かな胸元に押し付け、同時に小包子ちゃんの柔らかな小さな手が彼女の手をしっかりと握りしめた。まるで怖がらないでと慰めているかのように。

記者たちは、10歩ほど手前で足を止めた。

どこからともなく現れた二人の黒服で眼鏡をかけた大柄な男性が、凶悪な表情で門神のように彼らの行く手を阻んでいた。

「おい、お前ら何者だ、どけ!邪魔するな!」スクープに目がくらんだ記者が、考えもせずに口走った。

しかし群衆の中には機転の利く者もいて、話した人の腕を掴んで、何か恐ろしいものを見たかのような顔で警告した。「気でも狂ったのか!あれは陸さまの護衛だぞ!」

「りっ...陸さま...まさかあの陸さまじゃないだろうな?」

「馬鹿言え!首都にいくつ陸さまがいると思ってるんだ!」

「でもどうしてわかるんだ?顔に書いてあるわけじゃないだろ!」

「お前バカか?服の紋章見えないのか?」

そう言われて、全員が一斉に三歩下がった。先ほど態度の悪かった数人は恐怖に満ちた表情で謝り続けた。「すみません、申し訳ありません!目が曇っていました!どうか気にしないでください!」

なんてこった!この二人は陸さまの私設警護員?じゃあ後ろの三人は一体何者なんだ?

記者たちは首を伸ばして真相を確かめようとしたが、目が届くや否や、全員が血の気が引いた顔で引き下がった。

少女を抱きしめている男性は、体格が良く、顔つきは厳しく、てんじんのようだった。ただ、その目つきがあまりにも鋭く、オーラがあまりにも強烈で、少し経験のある記者たちは人の表情を読むのが得意だったが、目の前の男性が手ごわい相手だとすぐに察し、同時に事態が普通ではないことに冷静になった...

「何が寧夕だ、お前が見間違えたんだろ!あそこは三人家族じゃないか!あの女性が寧夕なわけないだろ!」