古い屋敷の裏口。
寧夕は片手で坊ちゃんを抱き、もう一方の手でバイクの収納ボックスから小さな子供用ヘルメットを取り出し、続いてシートベルトも取り出した。
傍らで陸景禮は口角を引きつらせながら見ていた。「準備万端だな!最初から坊ちゃんを連れ去る魂胆だったんだろう?知らない人が見たら、誰かと駆け落ちするつもりかと思うぞ!」
「駆け落ちしたって何か問題でも?」寧夕は坊ちゃんにヘルメットをかぶせ、シートベルトで自分の腰に固定した。「坊ちゃん、しっかりつかまってね。出発よ!」
寧夕が坊ちゃんを連れて颯爽と去っていく様子を見て、陸景禮は呆れて呟いた。「小夕夕ちゃんが坊ちゃんの失われた母性を補っているのか、それとも父性を補っているのか、本当にわからないな...」
普通なら、父親が息子を連れてこんな冒険をするべきだろう?
母親が真夜中に息子を連れてバイクに乗るなんて...
しかし、陸霆驍にこんな風に坊ちゃんを連れ回させるなんて?
ありえない!
だから、彼は小夕夕ちゃんが本当にすごいと思った。母親にも父親にもなれるなんて!
今夜は満月で、涼しい風が吹き、天気は珍しく良かった。
「時速70マイル、気分は自由自在、目指すはエーゲ海、全力で走れば夢は彼方に、私たちは世界を漫遊したい...風に乗って走れば自由が方向、雷と稲妻の力を追いかけて、広大な海を胸に詰め込んで、どんなに小さな帆でも遠くへ航海できる...」
寧夕は普段400キロで走るバイクを40キロに落とし、小さな歌を口ずさみながら、坊ちゃんを連れて、ゆっくりと首都の夜を巡った...
しばらく走ると、後ろから突然、よく知っているバイクのエンジン音が大量に聞こえてきた。
振り返ってみると、やはりアカさんたちの一団だった。
後ろのアカさんたちも前方の寧夕に気づいた。
アカさんの後ろに乗っていた香香が興奮して言った。「アカさん、スピード落として!前のバイク、夕兄さんに貸したやつにそっくりじゃない?」
アカさんはスピードを落とし、ヘッドライトを明るくして前方のバイクのナンバープレートを確認した。「間違いない、あのバイクだ!」
「早く追いつこう!」香香は興奮して急かし、手を振りながら大声で叫んだ。「おーい、夕兄さーん!」