第306章 キスの方が似合う

大魔王の言葉が落ちた瞬間、彼女はその場でひざまずきそうになったほど驚いたのだ。一体どこが大胆だというのか？

先ほど彼女が入ってきたのは、むしろ臆病すぎて、怖くて入らざるを得なかったからだ！

この時、寧夕はまるで経穴を押さえられたかのように、スーツケースを引いたまま、一歩を踏み出そうとした姿勢で動けなくなっていた。

彼女は慎重に陸霆驍の表情を観察したが、残念ながら大魔王の修行が高すぎて、彼が冗談を言っているのか本気なのか全く分からなかった。

寧夕は頭をフル回転させ、そして閃いたように急いで口を開いた。「あの誰だっけ...そうだ、タゴール！タゴールは言ってたわ。人を愛するなら、その愛を陽光のように彼女を包み込み、そして自由を与えるべきだって！」

陸霆驍はそれを聞いて、口角が微かに上がったようだった。

寧夕は彼のこの笑いとも笑いでないような表情が何を意味するのか分からず、必死に考えて続けた。「タゴールはまた、好きは奔放だけど、愛は自制することだとも言ってました！タゴールはさらに、愛とは一時的な無謀な引き止めではなく、相手が自由に生きていけるよう助けることだとも言ってました！」

陸霆驍は悠然と彼女を見つめながら、「それもタゴールの言葉かな？」

「えーと、たぶん...」寧夕は干笑いした。実際この時彼女の頭は混乱していて、これらの言葉が誰の言葉なのかまったく分からなかった...

「他にもある？」陸霆驍は更に尋ねた。

寧夕は小鳥のようにこくこくと頷いた。「あります、タゴールはまた、人を監禁するのは違法だとも...」

陸霆驍の口角の笑みがゆっくりと広がり、冷たい指で彼女の顎を軽く掴んだ。「じゃあ...タゴールは言ってなかったかな？この口は、でたらめを言うのには向いてないけど、キスをするのには向いているって」

言葉が落ちるや否や、彼は彼女の唇を覆った。

寧夕：「！！！」

明らかにあなたこそがでたらめを言っているじゃない！タゴールがそんなこと言うはずないわ！

驚きのあまり、寧夕の手からスーツケースが「ドン」と床に落ち、続いて耳元で「バン」という音が聞こえた。部屋のドアが強く閉められた音だった。

次の瞬間、天地がひっくり返るような感覚の中、寧夕は「ドサッ」と後ろの柔らかいベッドに倒れ込んだ。