第410章 また誘惑する！また誘惑する！

ようやくオフィスの前に着いた。

「バン」という音とともに、陸霆驍は力強くドアを押し開けた。

オフィスの中で、寧夕がソファに静かに座り、手には目立つ真っ赤な表紙の分厚い冊子を持っていた……

少女の手にある冊子を見て、陸霆驍のいつもは波一つない瞳の奥が、一瞬にして波立ち、声さえも少し震えていた。「寧夕……」

寧夕は目を瞬かせ、突然ドアを開けて入ってきた陸霆驍を少し驚いて見つめた。陸霆驍は表情が凝り、息を少し荒げ、ネクタイも服も少し乱れていた……

「あの、BOSSさま……どう……どうされたんですか？」寧夕は呆然と尋ねた。

陸霆驍は一歩一歩彼女の前まで歩み寄り、冷たい視線を彼女の手にある冊子に落とした……

寧夕はその様子を見て急いで謝った。「あっ！これは……申し訳ありません……ここに置いてあるのを見て……私的な資料ではないと思って……つい手に取って見てしまいました……」

そう言うと急いで冊子を元の場所に戻し、もう触れないようにした。

「寧夕、これは母が誰かに頼んでここに置かせたもので、私は見ていない」陸霆驍は背筋を強張らせ、その声には気づきにくい緊張が滲んでいた。

「あぁ……」寧夕は頭を掻いた。

「信じてくれないのか？」

「えっ？もちろん信じますよ！」

「お前は……」陸霆驍は説明が得意ではないようで、しばらくしてから固い表情で、一字一句はっきりと言った。「怒らないでくれ。これは全て両親が勝手にしたことで、私には全く見合いをする意図はない。たとえ彼らが手配したとしても、私は行かない」

以前は彼女からメッセージが来たことに心を奪われ、こんな重要なことを忘れてしまっていた。

会社の入り口に着いた時、やっとこの見合い写真の冊子が彼のオフィスに置いてあることを思い出した。寧夕はすでにかなりの時間中にいて、おそらくもう見てしまっているかもしれない……

寧夕はその言葉を聞いて、ようやく全てを理解し、その場で呆然となり、驚きの表情を浮かべた。

陸霆驍はこのために……急いで来て、こんなに慌てていたの？

一瞬、心の中に言い表せない感情が湧き上がった……

彼女は確かにわずかでも可能性があれば努力しようと思っていたが、陸霆驍が最後まで待ってくれるなんて、そんな身勝手な望みは持っていなかった。

もし途中で好きな人ができたら、きっと祝福するつもりだった！