こちらの陸景禮は、これから小夕夕ちゃんが来ることを考えると、彼女に見せてはいけないものを見られてしまうかもしれないと思うと、女の子を口説く気分も失せてしまい、そっとお兄さんの側に寄って、探りを入れるように言った。「お兄さん、お姉さんのことだけど、適当な理由をつけて来ないように言った方がいいかな?」
陸霆驍は長い指で肘掛けを規則正しく叩きながら、最後にこう言った。「彼女はもう道中のはずだ。後で私からメッセージを送って、私の所に来るように伝える」
このような事態では、いかなるリスクも冒せなかった。
言い終わるとすぐに立ち上がり、もう帰る準備をしているようだった。
莊可兒は陸霆驍と陸景禮が何かこそこそと話し合い、話が終わるとすぐに帰ろうとしているのを見て、落ち着いた表情を保とうとしても、この時ばかりは失望と当惑の色を隠しきれなかった。「陸さん、もうお帰りですか?もう少しいらっしゃいませんか?何か急用でもあるのですか?」
この言葉を聞いて、周りの人々は皆耳を澄ませた!
えっ?陸霆驍が帰るって?
こんなに早く?まだ...まだ5分も経ってないんじゃない?
お兄ちゃんが来てたった5分で帰ろうとするなんて、陸景禮もさすがに面目が立たないが、今日のことは確かに自分がきちんと準備できていなかったのだから仕方ない!
「もう!驍にいさんがこんなに早く帰っちゃうなんて!きっとあの莊可兒にうんざりしたんでしょ!」
「間違いないわ!陸社長は静かなのが一番お好みなのに。私たちだって陸社長を尊敬してるけど、邪魔するなんてとてもできないわ。なのにあの子ときたら、図々しく近づいて嫌われるようなことするなんて!」
「私たちは遠くから眺めることすらできなくなっちゃった!」
「むかつく!家柄がいいからって何でも好き勝手していいと思ってるの?」
……
耳に入る噂話を聞きながら、莊可兒は顔色を保つのが難しくなっていた。この忌々しい女たち、でたらめを言うな、陸霆驍が帰るのは私にうんざりしたからじゃない!
前回一目見た時から、天にも昇る思いで、彼女はもうこの男性に心を決めていた。今やっと会えたというのに、こんな簡単に諦めるわけにはいかない!