「黙りなさい!」
薛おじいさまは怒って言った。「今日は私の誕生日だ。まずはお客様をもてなしに戻りなさい!すべての話は、宴会が終わってからにしよう!」
奥様は口をとがらせた。
しかし、薛晟は先に頭を回し、宴会場へ向かって歩き出した。
薛おじいさまは彼が振り返らない決然とした様子を見て、この事態が本当にそうなってしまったのだと悟り、少し落胆して頭を垂れた。
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薛夕と向淮は薛晟の後ろについて歩いていた。二人は薛晟の背中を見ながら、薛夕は彼の苦痛と無奈さを感じ取り、心の中でも少し落ち込んでいた。
しかし、向淮は突然横を向いて口を開いた。「うちのお父さん、すごいね」
薛夕:?
誰があなたとうちのお父さんなの!
眉をひそめようとしたが、突然彼の次の言葉を聞いた。「薛家の会社はもう価値がないだろう。だから彼は株式を要求せず、人を連れて行くんだ。今の時代、人材は株式よりも価値がある」
薛夕は突然悟った。
もともと薛晟が株式を要求しないと言ったとき、彼女は実際にお父さんのために不公平だと思っていた。半生をかけて築き上げた成果を、なぜ簡単に手放すのか?
でも、そういうことだったのか!
彼女は向淮を一目見て、この人が人を見る目や物事を見る目がとてもよく、本当に優秀だと気づいた。
このような人なら、理屈上は商売の世界でも凄いはずなのに、なぜ錢鑫に追い出されてしまったのだろう?
前方では、薛晟は何事もなかったかのように見えたが、彼の手を握っている葉儷だけが、夫の落胆した気持ちを感じ取ることができた。
葉儷は彼の手を叩いて、口を開いた。「大丈夫よ、家にはお金に困ってないわ。私が絵を描いてあなたを養うわ」
薛晟は一瞬驚き、さっきまで平気だった目頭が、突然赤くなった。
葉儷は急いで小声で慰めた。「あなたが18年間私を養ってくれたんだから、今度は私があなたを養う番よ。それに、株式は要求しなかったけど、手元にはお金があるでしょう。私たちの家は貧乏じゃないわ!」
薛晟は笑った。「自分で会社を立ち上げたいんだ。私たち家族だけの会社を」